財産分与を成功させる8つの手順を詳しく説明します。
財産の一覧化(1)
まずは夫婦の財産を一覧化しましょう。以下に金額が大きくなりがちな財産を箇条書きにしておきます。
- 土地建物
- 自動車・バイク
- 宝石・貴金属
- コレクション(美術品・絵画 等)
- その他動産(家具・ブランド品 等)
- 現金
- 預貯金
- 株券
- 会員権
- 年金
- ペット
- 借金
なお財産を一覧化するためのフォーマットをお探しの場合は、裁判所が公開している書式が参考になりますのでチェックしてみてください。
参考 「婚姻関係財産一覧表」について(東京家庭裁判所の場合)裁判所財産の証拠収集(2)
一覧化した財産の裏付けをとりましょう。勝手に処分される可能性も否定できないからです。
特に別居する予定があるなら、財産の存在を証明する証拠は絶対に必要です。なぜならば一度別居すると気軽に元住居に立ち入ることが難しくなるからです。(勝手に立ち入ると「住居不法侵入」で訴えられるリスクがあります!)通帳のコピーをとったり、写真におさめるなどしておきましょう。
またすぐに現金化できる貴金属・宝石類も写真に撮っておきましょう。念のため、財産分与の証拠となるものを箇条書きにしておきます。
- 収入 ⇒ 給与明細書・源泉徴収票のコピー
- 預貯金 ⇒ 通帳のコピー
- 有価証券 ⇒ 株式の取引報告書、債券など証券類のコピー
- 生命保険 ⇒ 保険証券のコピー
- 不動産 ⇒ 見積書、不動産権利書のコピー、固定資産評価証明書
- 自動車 ⇒ 車検証・売買契約書のコピー
財産分与の証拠を残すポイントについては、以下の記事にまとめていますので参考にしてください。

財産の評価(3)
財産の評価額をチェックしましょう。評価・査定に時間がかかることもあるので早めに手を打ちましょう!
金額が大きくなりがちな不動産については、以下の記事を参考にしてください。その他財産の具体的な評価方法は、のちほど詳しく解説します。

財産分与の分割案(仮)作成(4)
財産を折半するのは予想よりも難しいかもしれません。特に財産の大部分が不動産で占められる場合には要注意です。
不動産を売却して折半するのが一番シンプルな解決策ですが、住宅ローンの支払いが終わっていない場合には、金融機関の許可が得られないという理由で売却ができない可能性があります。
また金融機関の許可が得られても、配偶者が売却に反対する可能性もありますし、売却することで夫婦が合意したとしても売却交渉次第では、売却時期が1年後、2年後になることも珍しくありません。
不動産がある場合には、以下の点をハッキリさせておく必要があります。
- 不動産を売却するか?
- 住み続ける場合はどちらが住むか?
- どちらがローンを支払うのか?
- ローン完済後の所有者は誰か?
特にローン完済後のことまでは頭が回らないことも多いので注意してください。複数の可能性を想定しておけば、想定が外れても動じず対応できます。
配偶者と交渉(5)
離婚協議で交渉すべきことは多岐にわたります。財産分与の交渉をする前に、以下の知識に習熟している必要があります。
- 離婚するか否か
- 離婚する時期
- 親権
- 面会交流権
- 養育費
- 婚姻費用
- 慰謝料
上記の1つでも欠けると、ちぐはぐな交渉になってしまうので気を付けましょう。
財産分与の分け方を決める(6)
財産分与の方法を大筋合意できたら、細かい約束事を決めましょう。
- やり取りする期限(現金・預貯金)
- 財産を処分する期限
- 処分する条件(不動産価格 等)
- 処分した財産の分け方(一括、分割等)
- 約束を破った場合の罰則
専門家が関わらない場合、具体的な分割方法まで頭が回らないケースがほとんどです。財産分与の詰めが甘くならないように気を付けましょう。
契約書の作成(放棄)(7)
残念ながら、離婚時の口約束が守られるとは限りません。離婚すれば赤の他人ですし、心が離れることも自然です。
約束が破られた時の対策として、離婚協議書を作成しておきましょう。離婚協議書を残してけば、約束が破られた時に対抗する材料になります。裁判で離婚協議書は、重要な証拠として活用できます。
なお裁判せずに強制執行したい場合には「公正証書」の作成を目指しましょう。公正証書とは、公正役場という施設で公証人に作成を依頼する書類のことです。
公証人が債務者・債権者の双方に対して契約内容を確認しながら契約書を作成します。公証人は、法務大臣が任命した人物です。
公証役場のホームページには、公証人について以下のように説明しています。
公証人は、実務経験を有する法律実務家の中から、法務大臣が任命する公務員で、後記の公証役場で執務しています。すなわち、その多くは、司法試験合格後司法修習生を経た法曹有資格者から任命されます。そのほか、多年法務事務に携わり、これに準ずる学識経験を有する者で、検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経た者も任命できることになっています。平成14年度から、法曹資格を有する裁判官・検察官・弁護士については年3回、多年法務事務に携わり、これに準ずる学識経験を有する者で、検察官・公証人特別任用等審査会が定める基準に該当する者については年1回の公募により任命されます。
【引用:公証人・公証人会のホームページ】
公正証書は一般の契約書と異なり「裁判をせずに強制執行できる」効力があります。あなたが債権者なら、公証役場に無料相談の予約をするとよいです。
一方であなたが債務者なら絶対に作成を拒否すべき契約書です。なぜならば約束を破れば勤め先の給料差し止めの可能性があるからです。
公正証書の作成方法について詳しくは以下の記事をご覧ください。

名義変更(8)
財産分与の最後のステップは「名義変更」です。不動産の名義変更(移転登記)は、法務局で手続きする必要があります。
また車の場合は運輸局で手続きする必要があります。不動産にせよ車にせよ、名義変更の手続きは必要書類や手順が厳密に決められています。司法書士などに相談するか、各窓口(法務局や運輸局)に相談しましょう。
最後に
財産分与は離婚問題の中でも奥が深いテーマの一つです。もっと詳しく財産分与について学習したい方は以下の記事も参考にしてください。
