離婚の財産持ち逃げ被害予防3選・対応策4選

離婚 財産 持ち逃げ

配偶者に財産管理を任せていると、離婚時に財産を持ち逃げされる可能性があります。財産を持ち逃げされることに離婚後に気づいても後の祭りです。

「財産を持ち逃げしただろ!?」と元配偶者を追求しても「証拠はあるの?」とか「気に入らないなら裁判すれば?」なんて、開き直られるだけでしょう。

離婚時の財産持ち逃げ被害を防ぐためには、どうすればいいでしょうか?本記事ではじっくり考えていきたいと思います。

財産持ち逃げの予防策(1)

財産持ち逃げの予防策を3つお伝えします。

財産持ち逃げの予防策
  1. 財産を日頃から把握
  2. 財産隠しの兆候をチェック
  3. 仮差押え

財産を日頃から把握(1-1)

財産持ち逃げ被害に遭う典型的な被害者は、家計管理のすべてを奥さんに任せる男性や、決まった金額を旦那さんからもらうだけの逆小遣い制で暮らす女性です。

男性のほとんどは、じぶんの給料の金額は把握しています。しかし、すべての収支を把握している人は驚くほど少ないです。

もしあなたが住宅ローンの残高、月々の保険料、貯蓄残高等、月々の貯蓄費用をスラスラといえないのであれば黄色信号です。

もしかしたら稼いだお金の一部がヘソクリとして引き抜かれているかもしれません。財産隠しを計画的に実行している人の中には、2,000万円以上ものお金をこっそり隠しもっている人もいるのですから笑いごとではありません。

もし配偶者の財産隠しが疑われる場合、「貧困老人にならないために今から計画的に資産形成したい」とか「子供にかかる将来の学費について考えたい」などと主張するなどして、常に財産の状況を把握できる状況を生み出すことが最優先事項になるでしょう。

常に見られているという意識を相手に持たせることができれば、財産隠しをけん制することも期待できます。もちろん月々の収支を把握することで、財産隠しの兆候がないか監視することも期待できます。

後ほど詳しく説明しますが、一度財産隠しが行われた後では隠された財産を特定することは非常に難しくなります。また別居開始後であれば、より一層隠し財産を把握することが難しくなります。日頃から財産を管理しておくことが、財産隠しを予防する一番の対策であると心得ましょう。

財産隠しの兆候をチェック(1-2)

財産隠しの兆候がないか確認するために、給与口座からのお金の流れを把握しましょう。

まずあなたがやるべきことは、見ず知らずの口座への入金がないか確認することです。見ず知らずの口座への入金があれば、その目的をさりげなく聞いてみましょう。

次に確認すべきは、給与口座から引き出されたお金と、家計簿で管理している支出の差です。家計簿で管理しているよりも大きな額が給与口座から毎月引き出されていれば、へそくりにお金が回されているのかもしれません。

余裕があれば、費目毎の費用を時系列で比較しましょう。ある時点から特定の支出が増えていれば、妥協せずに追及することが大事です。

仮差押え(1-3)

財産を勝手に処分されることが予想できる場合には「仮差押え」という手段もあります。仮差押えについて、順を追って説明していきます。

仮差押え
  1. 仮差押えとは?
  2. 仮差押えは本当に有効か?
  3. 仮差押えの手続き

仮差押えとは?(1-3-1)

仮差押えとは、裁判所の権限により財産を勝手に処分できないようにすることです。例えば裁判所から金融機関に命令を出し、銀行口座の入出金を凍結するなどが考えられます。

実は仮差押えの制度は、本来は離婚の財産隠しを防ぐ目的で利用することを想定していません。本来は複数の債権者がいる場合の債務整理を念頭した制度です。

仮差押え制度が有効な事例

例えば借金の総額が300万円ある人が資産を全て売却して100万円を捻出したとします。債権者が1人だけであれば、捻出した100万円を全額返済に充てるだけです。

債権者が複数名いる場合、どの債権者から優先的に借金を返済すべきか調整する必要があります。

しかし債権者間で返済額を調整する前に、勝手に債務者が財産を処分して夜逃げすることも十分考えられます。

以上のような債務者の身勝手な行動を防止するための制度が「仮差押え」なのです。

離婚問題の場合は、基本的に債権者は配偶者の一人だけです。本来であれば仮差押えの制度を利用するまでもないはずです。

しかし民法の規定では、債権者が1人の場合や離婚問題の場合に仮差押えの制度を利用してはいけないと規定されているわけではありません。ですから離婚問題でも差押えの制度が利用できるのです。

仮差押えは本当に有効か(1-3-2)

勝手に財産を処分できなくする制度は、財産隠しを防ぐという目的では非常に有効です。しかし仮差押えをすることが本来の目的と合致するかは冷静に見極める必要があります。

例えばあなたが、とにかく早く離婚したいと強く願っているとします。そのような状況で仮差押えの手続きを行ったとします。さて離婚という目的達成に近づくでしょうか?

おそらく答えはNOだと思います。なぜならば仮差押えの手続きを間違うと、相手方の逆鱗に触れる可能性があるからです。

銀行口座を凍結する場合、夫婦共有財産だけではなく婚姻前から築いてきた財産や相続財産まで一緒に凍結してしまうリスクがあります。

仮差押えの行為は「あなたを信用していません」というメッセージにも受け取られかねないのです。つまり仮差押えはむやみやたらに乱発するものではありません。

またそもそも相手方が隠し財産をどこに所有しているかわからなければ、仮差押えできませんから注意して下さい。これまでの内容を整理すると、仮差押えは以下2つの条件に当てはまる時のみ有効です。

  • 財産の隠し場所を特定
  • 財産を処分される可能性が高い

もしもあなたが隠し財産の存在に気付いていることを相手方に認識されていなければ、知らないフリをして離婚協議を進めた方が本来の目的である「早く離婚する」に近づくことは明らかです。

隠されている財産と、早く離婚するという目的の両方を天秤にかけて、どちらを優先すべきか考えてみることをお勧めします。

仮差押えの手続き(1-3-3)

仮差押えの手続きは、必要書類を提出し、裁判官との面接を経て決定されます。

申立に必要な費用自体は、5,000円~8,000円程度で済みます。しかし差し押さえる財産の10%~15%程度の担保金を法務局に納めることを要求される可能性があります。ただし、専業主婦であり収入がないなどの事情があれば、担保金を納めなくても申し立てが許可されることもあります。

なお仮差押えに必要な書類等を箇条書きにすると以下のようになります。

  • 夫婦ぞれぞれの戸籍謄本
  • 銀行の商業登記簿謄本
  • 債務者の不動産登記簿謄本
  • 申立書
  • 隠し財産の証拠・陳述書
  • 第三債務者に対する陳述催告の申立書
  • 申立費用

本記事では、一つ一つの書類に関する詳しい説明は割愛します。弁護士の助けがなくても書類を準備することは不可能ではありません。

しかし申述書(申立てた背景などを説明する資料)や第三債務者(銀行等)に対する陳述催告の申立書を用意するのは、法律に疎い素人には難しいと思います。そのため弁護士に相談するのが現実的な選択肢になると思います。

財産持ち逃げ被害への対応策(2)

離婚協議中に財産を調査した結果、財産の持ち逃げが疑われる場合はどう対処すればよいでしょうか?

財産の持ち逃げ被害を暴く確実な方法はありませんが、対抗する手立てがないわけではありません。ここから先は、財産持ち逃げ被害への対応策を解説していきます。

財産持ち逃げ被害対策
  1. 弁護士会照会
  2. 文書送付嘱託
  3. 離婚拒否を貫く
  4. 民事上の損害賠償

弁護士会照会(2-1)

弁護士であれば誰もが所属する弁護士会から金融機関に対して、特定の人物の口座有無や残高情報を開示するように依頼することができます。

「弁護士会照会」、「全店照会」ともいわれます。弁護士会照会は、弁護士法第23条の2に基づき行われる制度です。

預貯金を強制執行する裁判判決を勝ち取るためには、その前提として「支店名」を特定しなければならないため、弁護士会照会はニーズの高い制度です。

しかし弁護士会照会は万能ではありません。なぜならば、弁護士会照会をしても金融機関が照会に回答する義務がないからです。

多くの金融機関は、預金者の秘密保護の観点から開示を断ります。金融機関にとっても預金者の情報を開示することは、預金者からのクレームや損害賠償請求を受けるリスクがあるからです。

もちろん金融機関によって対応には差があります。基本的に弁護士会照会の求めには応じないという金融機関が多いですが、裁判の確定判決がでていれば弁護士会照会に応じる金融期間もあります。

もし弁護士紹介を利用したければ、まずはお住いの都道府県の弁護士会のホームページなどを閲覧し、相性の合いそうな弁護士に相談することをおススメします。

文書送付嘱託(2-2)

離婚裁判にもつれ込めば、文書送付嘱託(ぶんしょそうふしょくたく)という制度を利用できる可能性があります。文書送付嘱託により、金融機関等に銀行口座残高や入出金履歴の提出を求めることができます。

ただし、文書送付嘱託をするためには財産のありかをある程度確定しておく必要があります。例えば銀行口座の場合は、金融機関名・支店名までの情報は必要になります。氏名・生年月日だけしか判別していない場合には、文書送付嘱託の利用が裁判所に認められない可能性もあります。

氏名・生年月日までしか判明していなければ、口座を1つに特定できない場合もあります。間違った口座情報を開示したとなっては大問題になりますから、銀行も口座情報の開示に及び腰になるのが一般的です。

なお離婚裁判を経て離婚が成立する割合は、全体の1%程度です。なぜならば離婚裁判をするためには必ず離婚調停を経なければいけませんし(調停前置主義)、裁判になれば弁護士費用も必要になります。

一言でいえば負担が大きいのです。相手方が離婚自体には合意している場合、裁判の負担を考えれば財産分与を諦めるという選択肢もあります。

一方で財産の金額が大きければ、財産分与を求めて裁判をすることも選択肢の一つです。こちら側にとって負担が大きいということは、相手方にとっても負担が大きいということです。

相手方も調停に参加しなければいけませんし、裁判になれば弁護士を雇う必要があるからです。そのため相手方が財産分与を拒否していたとしても、あなたが徹底的に追及するという立場を崩さなければ、相手側が観念してくれる可能性もあります。

離婚拒否を貫く(2-3)

どうしても隠し財産を特定できない場合には、徹底的に離婚拒否を貫くのが最も有効な対策です。

例えば離婚を切り出されたものの財産隠しが疑われる場合には、「隠し財産を明らかにしないと離婚しない」と強気の姿勢で交渉ができます。

一方であなたが離婚を望む場合には離婚拒否の対策は利用するのが難しいです。例えばあなたが離婚を切り出していざ蓋を開けてみたら、配偶者が長年にわたり財産を隠していたという場合は厳しい交渉を強いられることになると思います。

民事上の損害賠償(2-4)

離婚後に隠し財産の疑いが浮上した場合には、離婚成立後2年間に限り「財産分与請求調停」を申立てることが可能です。

ただし、裁判では訴えを起こす側が相手の非を立証する必要があります。そのため相手側の財産を特定できない状態では、必ず勝てるとは言い切れません。

まとめ

財産隠しの予防・対応策をお伝えしてきました。一度財産を隠されてしまうと勝ち目が薄いので、財産隠しが疑われる段階で早めに対策にのりだしましょう。