有責配偶者からの離婚請求が認められる要件・判例・慰謝料を解説!

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求は認められないといわれています。しかし有責配偶者は一生離婚できないのでしょうか?

本記事では、有責配偶者が離婚を目指すために知っておくべき知識を整理しています。是非とも参考にしてください!

有責配偶者とは?(民法)(1)

まずは有責配偶者とは何か確認するところから解説します。有責配偶者とは、婚姻生活を破たんさせる原因をつくった配偶者のことです。

有責配偶者が申し立てた離婚裁判例を調べると、ほとんどが「不貞行為」です。

例えば、配偶者とは異なる異性と同棲生活をはじめた事例などが当てはまります。婚姻生活を破綻させる原因は、不貞行為の他にも「DV」「失踪」などが該当します。

あなたは本当に有責配偶者なのか?(2)

次に考える必要があるのは、「本当にあなたは有責配偶者なのか」ということです。

例えば婚姻中から不倫相手との同棲を継続しているなどの事情があれば、有責配偶者だと認めざるを得ません。なぜならば婚姻生活は破綻しており、その原因は明らかにあなたにあるからです。

一方で浮気の証拠を掴まれておらず配偶者との同居が継続している場合を考えてみます。この場合、あなたが有責配偶者であることをわざわざ自白する必要はありません。

有責配偶者であることを証明するのは、配偶者であってあなたではありません。そもそも現状は配偶者と同居しているのですから、婚姻関係が破綻しているとは言い切れません。つまり、以下の3点をもう一度考えてみてください。

  • 有責行為の証拠がある
  • 婚姻関係の破綻と有責行為の因果関係アリ
  • 婚姻関係が破綻している

上記3点の全てが揃っていないのに、自らを有責配偶者だと早合点してはいけません。

最終的には婚姻関係が破たんしているかが重要な分かれ道です。もしも婚姻関係が破たんしておらず夫婦円満の可能性があれば、許してもらうことに集中すべきだと思います。

また有責の証拠を掴まれていなければ、わざわざ有責であることを自白する必要はありません。ただし上記全てに当てはまっているのであれば、この先をお読みください。

この先を読めば理解できると思いますが、腕のいい弁護士に頼めば有責配偶者は離婚が認められるというわけではありません。まずは気分を落ち着かせて有責配偶者からの離婚請求の歴史から把握してください。

有責配偶者からの離婚請求の歴史(3)

ここからは、有責配偶者からの離婚請求の歴史を簡単に振り返っておきます。

有責配偶者からの離婚請求
  1. 昭和27年の最高裁判決
  2. 62年大法廷判決による判例変更

昭和27年の最高裁判決(3-1)

有責配偶者からの離婚裁判でもっとも有名な判決は昭和27年の最高裁判決でしょう。

この判決では妻と別居して愛人と同棲し、1児をもうけた夫からの離婚請求を棄却しました。踏んだり蹴ったり裁判ともいわれる判決文の一部を紹介します。

もしかかる請求が是認されるならば、妻は全く俗にいう踏んだり蹴ったりである。法はかくの如き不道徳勝手気儘を許すものではない。

【引用:最高裁判決27年2月19日 最高裁判所民事判例集 6巻2号110頁】

長らく上記の判決が裁判所を支配していました。離婚した夫からの離婚請求を認めてしまえば、「妻と離婚したいから浮気してやれ!」と考える男性が続出することも予想できますから、裁判所の判断を支持する人も多いです。

しかし一部の学者は「ふんだりけったり裁判」を批判し、有責配偶者からの離婚請求を認めるべきだと主張しました。このような考え方を破綻主義といいます。

破綻主義とは?

「夫婦生活の実態がなければ、離婚を認めるべき」という考えです。

こうした学説の影響を受けて、下級審では有責配偶者からの離婚請求を認める判断が示されるようになりました。

夫婦関係が破綻しているのに「絶対に」離婚を認めないのも、たしかにおかしな話です。そして転機になったのが62年の最高裁判決です。

62年大法廷判決による判例変更(3-2)

昭和62年の最高裁判決で、同居期間12年、別居期間約38年のケースで有責配偶者からの請求を認めました。(最高裁判所民事判例集 41巻6号1423頁。以下、62年大法廷判決)

この最高裁判決で最高裁判所は新たな指針を示しました。新たな指針では、一定の要件の下で有責配偶者からの離婚請求を認める判断を下したのです。ここから先は、62年大法廷判決で示された新たな指針について説明します。

有責配偶者からの離婚が認められる要件(4)

有責配偶者からの離婚が認められる具体的な要件は、以下の3つです。

新しい指針
  1. 夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
  2. 未成熟の子が存在しないこと
  3. 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと

ちなみに62年大法廷判決の差戻審(東京高裁判決平成元年11月22日 家庭裁判月報42巻3号80頁)は、上記①、②の要件が満たされ、③の要件については、財産分与または慰謝料により解決されるべきものとしました。

そして離婚後の生活費としての財産分与1,000万円と慰謝料1,500万円の支払いを命じ、離婚請求を認めたのです。

有責配偶者からの離婚が認められる要件は上記3つと説明されることが多いですが、上記3つの条件が絶対というわけではありません。

例えば未成熟の子が存在している場合でも有責配偶者からの離婚請求が認められた判決もありました。なぜ、このようなことになるのでしょうか?

その理由を知る手がかりは、先ほど紹介した昭和62年大法廷判決にあります。昭和62年大法廷判決では、有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準は「信義則上許されるか」だとしています。

つまり信義則上許されると判断されれば、上記3要件を満たしていなくても離婚は認められるということです。実際に裁判所以前の下級審では、上記3要件の適用に際して柔軟な考えをもつ判例もあります。

過去の判例を調査すると、以下の観点も裁判所は考慮しているようです。

有責配偶者からの離婚請求で裁判所が考慮すること
  • 別居中の婚姻費用を支払っているか?
  • 不貞行為の時期や程度
  • 不貞行為と婚姻関係が破たんした詳しい状況
  • 相手配偶者の婚姻を継続する意思、感情
  • 子供の感情
  • 財産分与額、養育費支払いの意思

では有責配偶者が離婚を目指すためには何を知っておけばいいでしょうか?

この記事を読んでいるあなたは、学者や専門家を目指すわけではないと思いますから、過去の離婚請求の判例から3要件適用の傾向について把握しておけば十分でしょう。

有責配偶者からの離婚請求の判例(5)

ここから先は、以下のテーマに沿って判例からわかることを紹介します。

過去の判例からわかること
  1. 有責配偶者が離婚を認められる別居期間
  2. 夫婦が両方有責配偶者の場合
  3. 未成熟子がいても離婚が認められた場合

有責配偶者が離婚を認められる別居期間(5-1)

有責配偶者からの離婚が認められる別居期間はどの程度なのでしょうか?

それを知るためには、昭和62年大法廷で示された「夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと」が、過去の最高裁判決でどのように適用されたか知る必要があります。

最高裁判決を調査した結論から言えば、明確な基準はないというのが正直な感想です。ただし「明確な基準はない」だけではよくわからないですよね。そのため有責配偶者からの離婚請求を認めた事例を時系列に列挙しておきます。

有責配偶者からの離婚請求が認められた事例
  • 約22年間の別居
    (昭和63年最高裁)
  • 約16年間の別居
    (昭和63年最高裁)
  • 約10年間の別居
    (昭和63年最高裁)
  • 約8年間の別居
    (平成2年最高裁)
  • 約6年間の別居
    (平成14年東京高裁)

下級審(最高裁以前)では、有責配偶者からの離婚請求を別居約6年でも認めています。上記のように時系列で眺めると、有責配偶者からの離婚が認められる別居期間は短縮傾向にあるようにみえます。

しかしあくまでも判決の基準は「別居期間」と「年齢」だけで決まるわけではありません。相手方の配偶者が離婚後の生活に困らないかという点なども考慮に入れる必要があります。

夫婦が両方有責配偶者の場合(5-2)

これまでの説明では、夫婦の片方が有責配偶者であるケースのみを取り上げました。しかし夫婦の両方が有責配偶者である可能性も十分に考えられます。

今回は不貞行為を行った妻が、暴力をふるう夫に対して離婚請求を申し立てた事例を紹介します。平成5年11月2日の最高裁判決では、不貞行為をした妻からの離婚請求を認めました。

最高裁判決では、浮気をした妻に夫婦関係の破たんの主な責任があることを認めつつも、暴力を振るった男性にも責任はあり、夫婦の別居期間が長期間に及んでいることから離婚を認めたのです。

ちなみに17年2か月の同居に対し、別居期間は9年8ヶ月でした。またこの事例では以下の事情も判決では考慮されています。

  • 2人の子供はいずれも成年に達している
  • 2人の子供は離婚に反対していない
  • 妻の不貞行為は継続していない
  • 夫の夫婦関係回復への意欲は薄い
  • 夫は離婚しても精神的・社会的・経済的に困窮しない

さらにこの判決では夫婦財産の清算的な性格を有する財産分与は有責配偶者であっても請求できるとしています。

未成熟子がいても離婚が認められた場合(5-3)

平成16年11月18日の最高裁判決では、未成熟子がいるにも関わらず有責配偶者からの離婚請求が認められました。

未成熟子とは、親の監護なしでは生活を保持しえない子のことを指します。ではなぜ未成熟子がいるのに離婚が認められたのでしょうか?この事例の概要を簡単に整理しておきます。

  • 家出して行方をくらました夫から妻への離婚請求
  • 夫は別の女性と生活している
  • 妻は4人の子供を生活保護を受給しながら育てた
  • 同居期間は約15年、別居期間は約14年弱
  • 婚姻関係の回復は困難
  • 子供は高校2年生であり未成熟子
  • まもなく高校を卒業する年齢に達している
  • 養育費が支払い続けた実績アリ(毎月15万円、7月と12月は40万円)
  • 有責配偶者からの離婚給付が期待できる(700万円)

以上の事情により、未成熟子がいても離婚を認めることが信義則に反しないと判断されたのです。

判決分では妻が夫から受けた精神的苦痛や経済的不利益は認めつつも、それらは別途補償されるべきものであり、離婚を認めない理由にはならないと結論付けています。

ただしそのような結論に至った大前提として、有責者の夫が養育費を長年にわたり支払い、離婚に伴う給付として700万円を支払うと提案していることが、判断に良い影響を与えているという印象を受けます。

有責配偶者が支払う慰謝料の総額は?(6)

有責配偶者が配偶者に支払う慰謝料は相場よりも高くなることが多いので注意すべきです。

例えばあなたが浮気をして証拠を掴まれた結果、配偶者から離婚と慰謝料を請求されたとします。この場合の慰謝料は、100万円~300万円が相場だと一般的にいわれています。

しかしこの記事を読んでいる方が知りたいのは、離婚を拒否する配偶者を納得させるために必要な妥当な金銭はいくらかということではないでしょうか?

先ほど紹介した昭和62年大法廷判決では、離婚後の生活費として、財産分与1,000万円、慰謝料1,500万円の支払いが命じられました。

昭和62年大法廷判決の有責配偶者は、2つの会社の代表取締役と不動産会社の取締役に就き、経済的にきわめて安定していました。しかし男性が経済的に安定しているはいえ、慰謝料1,500万円は相場よりもかなり高い金額です。

ただしこの事例では離婚するまでの別居期間が約36年間(同居は約12年)に及んでいることに注目すべきです。つまり結婚してから48年が経過していますから、夫婦二人とも老後に突入しています。

残りの人生を保障する金額として、合計2,500万円の支払いが必要だったことは覚えておいて損はありません。しかしここで一つ大きな疑問が浮かびます。

有責配偶者の年齢が若い場合には、どう考えればいいのかということです。有責配偶者からの離婚が認められる要件の一つに、「相手方の離婚後の生活が苛酷にならない」という条件がありました。

しかし老後まで元配偶者の面倒を見なければならないという意味ではないことは確かです。相手方だって若ければ離婚後に働くことはできるはずです。

ですから若い夫婦のうちの有責配偶者から離婚請求する場合であっても、莫大な金銭を支払う必要はないと考えられます。では離婚したい有責配偶者と、条件によっては離婚しても良い相手方にとって納得感が高い解決方法はどのようなものでしょうか?

法律で決められた答えではないのですが、よく用いられる慰謝料の計算方法を紹介します。

有責配偶者の支払う慰謝料
  • 「裁判で離婚が認められる想定期間」×「婚姻費用」

この計算方法は、「相手方の別居期間中は婚姻費用を支払い続ける義務があること」を根拠にしています。つまり相手方が婚姻費用を受け取る権利を解決金として保障するという考え方です。

例えば一家の稼ぎ頭の夫が有責配偶者であり、妻に離婚を求めるというような場合があります。この場合妻が夫の浮気に嫌気がさし、別居をはじめれば妻は夫に対して婚姻費用を請求できます。

妻が「本来受け取れる婚姻費用を離婚時に全て清算してほしい」と夫に主張するのは一定の説得力があります。さて婚姻費用の支払い義務を根拠にした計算式で議論になるのは、「裁判で離婚が認められる想定期間」です。

これまで見てきたように、有責配偶者からの離婚が認められる期間は短縮傾向にあります。しかし本当に裁判で離婚が認められる別居期間に正解はありません。

あくまでも裁判をしてみないとわからないというのが実情です。そのためお互いが納得できる慰謝料を、交渉を重ねて決める必要があります。

まとめ

本記事では、有責配偶者からの離婚請求について知っておくべき知識をまとめました。

有責配偶者からの離婚請求は大変だと思いますが健闘をお祈りしています。なお、記事の最後で紹介した婚姻費用の計算方法は以下の記事で詳しく解説しています。