『うつ病』と『離婚』の関係について、詳しく解説していきます。
回復の見込みのない強度の精神病とは?
民法第770条第1項では、回復の見込みのない強度の精神病を離婚を認める理由の一つに挙げています。
では具体的に強度の精神病とは何を指すのでしょうか?
過去の裁判例で回復の見込みのない強度の精神病と認定されたものを箇条書きにします。
- うつ病
- アルツハイマー病
- 痴呆化した精神状態
- 統合失調症(精神分裂病)
- 躁鬱病
但し、以上に挙げた病気になったら即配偶者からの離婚請求が認められるわけではありません。なぜならば「回復の見込みのない重度の」という条件をクリアする必要があるからです。
また「回復の見込みのない重度の」という条件だけでなく、以下のような条件も離婚請求を認める判断基準になるようです。
- 回復の見込みがない
- 離婚後の生活に見通しが立っている
- 正常な婚姻生活を送ることが困難
- 病気に理解があり、助けてきたか
「回復の見込みがない」、「正常な婚姻生活を送ることが困難」が離婚請求を認める条件になっていることは理解できるでしょうが、「離婚後の生活に見通しが立っている」ことが離婚請求を認める条件になっていることは覚えておきましょう。
重篤な精神病を患っている証拠例
重篤な精神病を根拠に離婚請求する際の証拠例を、箇条書きにします。
- 医師の診断書
- 入院・通院記録
- 献身的な介護を証明する日記やメモ
- 病気の回復に尽力したことを証明する証言等 etc
上記のうち「病気の回復に尽力したことを証明する証言等」がなぜ必要なのかわからない方も多いと思うので補足しておきます。
夫婦である以上は、夫婦の義務として同居協力扶助義務が課せられます。配偶者が精神病を患っているとなれば尚更病気の回復の為に尽力する努力が求められます。
もしも精神病回復のために尽力しなかったとなれば、夫婦の義務に違反していると見なされるばかりではなく、精神病を悪化させた原因の一端があると判断される可能性があるため「病気の回復に尽力したことを証明する証言等」が必要になるのです。
うつ病と「親権」との関係
うつ病だから親権者として不適格だと短絡的に考えてはいけません。うつ病でも立派に子育てをしてきたことを証明できれば親権を取得するチャンスはあります。
極端な話、夫婦のどちらかがうつ病患者、もう一方が暴力を振るう側だった場合には、どちらが親権をもつことが子供の将来にとって有益かは個別に判断するしかありません。
とはいえ「回復の見込みのない重度な精神病」である場合、親権者として不適格だと判断される可能性は高いでしょう。
うつ病と「養育費」の関係
うつ病と養育費に直接的な関係はありません。しかしうつ病が養育費に影響を与えないというわけではありません。
うつ病になり時短勤務になったり、休職したり、失職して収入が不安定であれば養育費の支払いに影響がでることは容易に想像ができます。
うつ病と「慰謝料」の関係
慰謝料とは、精神的苦痛を与えた者に対する損害賠償のことです。
重度の精神病にかかった側が配偶者から慰謝料を要求されることはあるのでしょうか?
過去の裁判事例をみても、重度の精神病にかかった側に対して、慰謝料請求を認めた例は見当たりません。(もしご存知がいたら教えていただけると嬉しいです!)
ですから「あなたが病気になったため、大変な目にあった!慰謝料支払え!」というような主張は乱暴です。なぜならば重度な精神病になった側としても、好きで重度の精神病になったわけではないからです。
一方で配偶者から重度の精神病に追い込まれた場合には、慰謝料請求をする余地は十分にあります。例えば、暴力やモラハラといったDVの被害にあったり、うつ病を考慮されず正当な理由もなく過度なストレスを与え続けられた場合などは、慰謝料請求が認められる可能性があります。
但し、配偶者の行為によって重度の精神病に追い込まれたことを理由に慰謝料を請求する場合には、「相手からの被害」と「精神病発症」との因果関係を立証する必要があります。
うつ病と「生活保護」の関係
近年では、うつ病を原因とした生活保護受給者も珍しくありません。
離婚のショックがキッカケでうつ病になり、生活保護受給を申請する人もいます。
生活保護を受給する条件
生活保護受給の条件を箇条書きにします。
- 援助する家族や親戚がいない
- 資産が全くない
- 病気や怪我で仕事ができない
- 月収が最低生活費よりも低い
生活保護を申請する方法
生活保護を申請する方は、厚生労働所の情報を確認することをおススメします。
参考 生活保護制度厚生労働省なお近年では生活保護受給者が増加し、国・地方自治体の財政を圧迫しているという背景があります。
ですから生活保護を受給しようと福祉事務所に足を運んでも、そもそも申請をしないように説得されたり、「もう、生活保護者が大勢いるから受理されないよ」などと声をかけられることもあるようです。
しかし生活保護の申請自体を拒否する権限は地方自治体にはありませんので、福祉事務所の担当者を説得するようにしましょう。
生活保護に対する免除事項
生活保護を受けると、基本的に国からの税金は免除されます。たびたび不祥事や受信料問題で騒動になるNHKの受信料なども支払う必要がありません。
その他、住居の更新料や、入院費なども支払われるので文字どおり最低限の生活をおくることができます。
生活保護者の制限
生活保護者は、最低限度の生活が保証されていますが、その一方で制限されることも多いです。生活保護者が制限される事柄を箇条書きにしておきます。
- 預貯金をもてない
- 不動産を所有できない
- 借金することができない
- 車をもてない・運転できない
- 生命保険に入れない(掛け捨てのみ)
- 診察してもらう病院に制限あり(緊急時を除く)
- 限度額より高い場所に住んでいれば引越し
- 福祉事務所との密なコミュニケーション