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不合理を超える鍵

前々回のレポートでは、離婚準備のゴールは「離婚戦略図」を作成することであることを解説しました。しかし「実現したいことのためにがむしゃらに頑張る」ということが現代人にとっては難しいことであることも事実でしょう。

そこで前回のレポートでは、不確実な未来に向けて頑張ることができない原因が「消費者マインド」にあることを明らかにしましたので、今回のレポートでは「消費者マインド」の乗り越え方についてわかりやすく解説しようと思います。

両親の離婚騒動

わたしの母親は、わたしが物心ついたころには「離婚する」が口癖になっていました。母が涙ながらに語っていた「あなたが大人になったら離婚する」というセリフは嘘偽りのない本音だったと思います。

それから約10年後、わたしが高校2年生で来年は大学受験という時期になって、母には大きなチャンス(?)が訪れました。なんと父が「離婚したい」と母に申し出たのです。プライドの高い父が、「財産も自宅も全部やるから離婚してほしい」と母に頭を下げたのです。

わたしは「とうとうこの時がやってきた」と観念しました。「できることならわたしが社会人になってから離婚してほしい」という気持ちはあれど、「離婚してほしくない」という気持ちはほとんどなく「離婚するのはもう避けられない」と腹をくくっていました。

しかし母は父からの提案を断固として拒否したのです。わたしは母の決断に正直驚きましたが、それからさらに時間が経過した今となっては、お互い「離婚したかった過去」がなかったかのように平穏な日常生活を送っています。

おそらく今の時点で両親に「離婚しない方がよかったか?」と質問すれば、おそらくは「離婚しないで正解だった」と答えるでしょう。なぜでしょうか?その答えはシンプルです。ズバリ「現在の生活がそれなりに幸せだから」です。

そう。人間は誰しも「過去」を「現在」の価値基準で評価するのです。つまり「現在」が幸せであれば過去の判断をプラスに評価する傾向があり、逆に「現在」が不幸であれば過去の判断をマイナスに評価する傾向があるのです。

そのことは「人間万事 塞翁が馬」という故事について勉強すれば、理解がもっと深まるはずです↓↓↓

時間の哲学

【人間万事 塞翁が馬】

昔、中国の北方の塞に住んでいた塞翁(老人)が飼っていた馬が、ある日、逃げてしまいました。人々が慰めに行くと、塞翁は「これは幸いになるだろう」と言いました。

数ヵ月後、逃げた馬は立派な駿馬(しゅんめ)を連れて帰ってきたので、人々がお祝いに行くと、今度は「これは災いになるだろう」と言いました。

塞翁の息子が駿馬に乗っていると、落馬して足の骨を折ってしまいました。人々がお見舞いに行くと、「これは幸いになるだろう」と言いました。

一年後、隣国との戦乱が起こり、若者たちはほとんど戦死しましたが、塞翁の息子は足を骨折していたため、兵役を免れることができ、無事に済みました。

「幸福」と思えることが、後に「不幸」となることもあり、またその逆もあることのたとえとして「塞翁が馬」と言うようになりました・・・・というのがこの故事の一般的な解釈ですが、ここではもう一歩先に進みましょう。

この故事をもっと大きく解釈すれば、こんなメッセージを読み取ることができるはずです。それは「未来が、過去・現在の認識を決める」ということです。この表現ではよくわからない方のために、もっとひらたくいえば「もし未来のあなたが幸せなら、過去や現在の決断は肯定されやすい」ということになります。

この原理を離婚準備に当てはめると、離婚に対する実践的な考え方を導き出すことができるでしょう。

例えばもしあなたが「離婚で後悔したくない」と願うなら、離婚で後悔しないための唯一の方法は、離婚したあとに「自分は幸せだ」と思える生活を実現するしかないのです。

つまりあなたが「離婚する」としても「離婚しない」にしても、その決断の評価を決めることのできるのは「現在のあなた」ではなく「未来のあなた」である以上、今のあなたがやるべきことは「幸せな未来を実現するために今やるべきこと」を積み重ねるしかないのです。

だからこそ「離婚準備の戦略図」において、「実現したいことは?」、そのために「達成すべきことは?」という質問をあなたに投げかけてきたと・・・いうわけなのです。

幸福のイメージ

もしあなたが真剣に「離婚準備の戦略図」に向き合えば、おそらく多くの人が「未来って具体的にいつのこと?」ということが疑問になるはずですので、最後にその疑問にお答えしておくことにしましょう。

日本が戦争に負けた時、昭和天皇は玉音放送(天皇の肉声を放送すること)のなかで「万国の未来、子々孫々のために」と呼びかけました。もしあなたが昭和天皇レベルの視点をもっているなら、「日本ではなく世界のために」、「自分の家族だけでなく、自分が死んだあとの子孫のために」実現したいことを考えてみるのもいいでしょう。

とはいえ空間的にも時間的にも、長期的な視野に立つことは難しいでしょうから、まずはあなたが自分事だと考えられる範囲(例えば自分の家族、数か月先)で実現したいことを考えてみて、慣れてきたら少しずつその範囲を広げていくことをおススメします。

くれぐれも短期的な視点で物事を考えることに慣れてしまわないように。自分の家族を守るために働くことはサルでもやっていることだし、自動販売機にお金を入れてジュースが出てくるのを待つことは小学生の子どもでもできることです。あなたが大人の人間であるならもっと先に意識を集中することに慣れるべきでしょう。

くれぐれもご注意ください。短期的な視点で物事を考えることに慣れすぎると、「魅力的な提案があるのですが?」という甘い囁きにコロッと騙されて他人に振り回されるようになります。なぜコロッと騙されるのかといえば、「苦しい生活を今すぐなんとかしたい」と願うからです。

他人が・あなたに・今すぐ・実践してほしいことに集中してはいけません。あなたが・大切な人のために・今日も明日もこれから先もずっと・実現したいことに集中することです。

そのことを忘れなければ、離婚準備中に他人に振り回されてウンザリしたり、自分の頭で考えて決断できずに自己嫌悪に陥ることもないでしょう。(続く)