2019年に「老後資金2,000万円不足問題」が社会的に大きく騒がれましたが、みなさんはあの時、何を感じたでしょうか?
「老後資金2,000万円問題」とは何だったの?を大まかに理解する図です。
昨年6月に話題になった金融庁の報告書。FP的には「金額は人によりけり🧐」ですが、これをきっかけに積立をスタートした方もいらっしゃるのであれば価値のある話題だったと思います。
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— 橘 彩子 | Ayako Tachibana (@aya_sophia11) June 2, 2020
「老後資金2,000万円じゃ足りるわけないでしょ?わたしはそれ以上の対策をしている。」と希望をもった人もいるでしょうし、「老後資金2,000万円なんてどうにもならない」と絶望した人もいたことでしょう。
そう。人間は希望したり絶望したりする動物なのですが、実はその能力は人間ならではの能力であることをご存知でしたか?
チンパンジーを研究している松沢哲郎先生(京都大学高等研究院特別教授・霊長類研究所兼任教授)曰く、「絶望するのも、希望をもつのも、人間だから」なのだそうです。
チンパンジーは「目の前にあるもの」をみています。しかし人間は「目の前にないもの」をみているのだそうです。例えばこんな興味深い実験があります。
顔の輪郭だけがあらかじめ描かれている似顔絵をチンパンジーに渡しすとどうなるでしょうか?チンパンジーは『顔の輪郭をなぞる』そうです。
では3歳2か月の人間に同じことをさせるとどうなるでしょうか?3歳2か月の人間は、『目と鼻と口を書き加える』のだそうです。
つまりチンパンジーは「顔の輪郭」をそのまま認識する一方で、生後わずか3歳2か月の赤ん坊ですら「顔の輪郭に欠けているもの」を認識しているのです。
「目の前にあるもの」を認識するのか?それとも「目の前にないもの」を認識するのかの?ということの違いは、とても大きいです。
例えばチンパンジーは絶望しません。松沢哲郎先生によれば、下半身不随になったチンパンジーは「今を楽しむ」そうです。
その一方で人間が病気により下半身不随になったら絶望するでしょう。なぜならば「健康だったらありえたはずの明るい未来」をどうしても想像してしまうからです。
さて、わたしがあなたにチンパンジーの話をしたのは、人間ならではの能力を絶望することに使うのか?それとも希望をもつことに使うのか?ということを、この機会に考えてほしいからです。
コップの中に水が半分入っています。チンパンジーなら「コップに水が半分『も』入っている」と認識するでしょうし、人間なら「コップに水が半分『しか』入っていない」と認識するかもしれません。
人間である以上、どちらの認識をもつことも可能となるわけですが、あなたはどちらの認識をもつべきでしょうか?
その答えについてはもうすでに明らかにしています。わたしは前回の講義のなかで、「現実を直視しつつ、なおかつ、未来を臨場感をもってイメージできる人」になることを推奨しました。
「現実を直視する」ことはチンパンジーのように世の中を認識することを意味しています。そして「未来を臨場感をもってイメージする」ことは人間のように世の中を認識することを意味しています。
しかし残念ながらわたしの実感として、ほとんどの人が「現実を直視する」ことに関しても、「未来を臨場感をもってイメージ」することに関しても、主体的にその力を発揮できていません。
そのことを「貯金」というわかりやすいテーマに沿って解説してみたいと思います。
「貯金できないのですがどうしたらいいでしょうか?」と質問されることがあります。答えは「貯金することを今この場で決めなさい。そしてやるべきことをやりなさい。」です。
ほとんどの人は「できたらいいな」というフワフワした気分のまま何かに挑戦しようとします。しかしその時点でもう失敗は確定しているも同然なのです。やるからには「できたらいいな」ではなくて「実現させること決めてから行動する」ことが極めて重要になります。
わたしは中学1年生の時、はじめて受けた全国模試の偏差値が37でしたが、偏差値73以上の進学校にいくことを決断し、そのためにできることをすべてやりました。
大学3年生の時、3週間の勉強で簿記2級に合格することを決断し、そのためにできることをすべてやりました。就職活動の時、外資系の戦略コンサルタントになると決断し、やるべきことをすべてやりました。
外資系の戦略コンサルタントになってからは、1年間でつくった300万円の借金を、1年で全額返済するために出世することを決断し、やるべきことをすべてやりました。
借金を返済してからは、会社に依存せずに自分の能力で自立する生活を実現したいと決断し、そのためにやるべきことをすべてやりました。
アフィリエイトで飯を食うと決断し、そのためにできることをすべてやりました。ブログで飯を食うと決断し、そのためにやるべきことをすべてやりました。
ライフコーチとして誰に忖度することもせず「自分のビジネスで飯を食いたい」と決断してからは、そのためにやるべきことをすべてやりました。
繰り返しになりますが、やるからには「実現する」ことを「自分の頭で」、「先に決める」わけです。しかしほとんどの人は「他人に」「自分の未来」を決めてもらっています。
実はそのことを実感するきっかけになったのが、老後資金2,000万円でした。そもそも老後資金が2,000万円足りないなんて誰が決めたのでしょうか?
『絶対に悠々自適な老後を実現する』と決断していた人であれば、「老後資金2,000万円不足問題」が騒動になった時、「そんなことは知っている。なぜ?いまさら世間は幸いでいるのか?」と疑問に思ったでしょう。
そう。「老後資金2,000万円不足問題」に度肝をぬかれた人は、自分の未来についてそもそも「自分の頭で」考えることをしていなかった人たちなのです。
以上のように、「他人に自分の未来」を決められてしまうと、他人の創ったリアリティーのなかに思考が閉じ込められてしまい、「自分で自分の未来」を決めるという当たり前のことができなくなってしまいます。くれぐれもご注意を!!!
「貯金できないのですがどうしたらいいでしょうか?」と質問する人のなかには、「あなた、貯金できないというわりにはずいぶん贅沢しているね?」とツッコみたくなるような人がたくさんいます。
ついつい贅沢してしまうのはなぜなのでしょうか?もちろんその答えは「今あるものにありがたみを感じる」ことをせず、自分が贅沢をしていることを自覚していないからです。
「貯金したいけどできない人」がなかなか受け入れられないアドバイスとして「あなたは今よりもずっと安いお金で生きていける」というものがあります。
わたしも外資系戦略コンサルタントだった頃は金銭感覚が壊れていたのですが、脱サラして節約生活をすることではじめてそのことに気づくことができました。
家賃17万5,000円のマンションをほとんど寝るためだけのために借りていましたが、ある日、思い切って家賃9万5,000円の場所に引っ越しました。引っ越した当初は「どうなることか」と心配していましたが、駅前の騒音からオサラバすることができたのでむしろ生活の質は向上しました。
また外資系戦略コンサルタントだった頃は毎回1,000円以上のお金を払って美味しいランチを食べていましたが、脱サラしてみれば、大きいおにぎりを1つ食べて空腹を紛らわすことができれば仕事に支障はないことに気づくことができました。
なにも「戦後の貧乏な日本と比較すれば・・・」というエピソードを持ち出すまでもなく、人類史のなかで現代ほど庶民が贅沢な食事を楽しんでいる時代はありません。極端な話、「白米を毎日食べることができるだけでも贅沢」なのです。
無論、「ほっともっと」やコンビニで弁当を購入する時点で贅沢をしているのであり、マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンなどのファストフードの味を月に1回でも楽しんでいるのであれば、その時点でもうあなたは贅沢をしていると断言してもいいでしょう。
あなたは「今あるものにありがたみを感じる」ことができているでしょうか?「自分の未来を先に決めてから行動する」ことができているでしょうか?
ほとんどの人は「自分の現状に不平不満をいいながら、目の前にないものを求めてストレスを感じている」だけに飽き足らず、「将来のビジョンの不透明」です。
しかしそんなことでは『平穏かつ充実感に溢れた日常』は一生手に入らないでしょう。あなたはそれでいいのですか?
次回は【変わるチェックリスト】の『感情』について取り上げます。お楽しみに!!