性の不一致で離婚や慰謝料請求が認められた過去事例を一挙紹介!

性の不一致 離婚

性の不一致で離婚が認められるためには、性の不一致が「婚姻が継続し難い重大な事由」と認められる必要があります。

とはいえ性の不一致がどのような状況であれば「婚姻が継続し難い重大な事由」に当てはまるのか専門家でも判断するのは難しいのが現実です。

そこで本記事では性の不一致により離婚が認められた事例など「性の不一致」に関わる情報を紹介しますので参考にしてください。

性の不一致による離婚の割合

姓の不一致 離婚 割合

「性的不調和」を理由に離婚を申し立てた割合は全体の1割です。(2014年司法統計)

なお1975年の数字をみると男性で8.1%、女性で4.4%です。長期的な目線でみれば、性的不調和により離婚を決める夫婦は増加傾向にあるようです。

性の不一致とは?

そもそも性の不一致とはなんでしょうか?性の不一致とは以下のような幅広い事情のことを指しています。

性の不一致とは?
  • 性交不能
  • 懐胎不能
  • 異常性欲
  • 性交拒否
  • 性病 等

以上の問題は、過去の離婚裁判において「婚姻を継続し難い重大な理由」と認められています。

しかし具体的な事例がないとよくわからない方も沢山いると思います。そこで具体的な裁判事例について紹介していきます。

性の不一致で離婚が認められた事例

性の不一致で離婚が認められた以下の事例を紹介していきます。

睾丸摘出により性的不能になった事例

昭和の時代では、婚姻関係を結ぶ前に男女の関係になっていないことも珍しくありませんでした。そのため結婚してから性の不一致が発覚するケースがあったのです。

これから紹介するのは病気のために睾丸を摘出するにあたり、医師から「生殖能力はなくなるが、性交渉には大した影響はない」と聞いて手術に踏み切った男性の事例です。

まずは以下に基本情報を載せておきます。

裁判の流れ
  • 第一審
    ⇒妻(原告)が夫(被告)を訴えた
    【新潟地長岡支判昭和33年10月21日】
  • 控訴審
    ⇒夫が第一審に控訴
    【東京高判昭和34年6月29日】
  • 上告審
    【最高裁判決昭和37年2月6日】
夫婦の歴史
  • 昭和28年8月   睾丸摘出
  • 昭和28年11月    事実上の婚姻
  • 昭和28年12月    婚姻届提出
  • 昭和30年5月      別居
  • 昭和33年10月       第一審(認容○)
  • 昭和34年6月    控訴審(認容○)
  • 昭和37年2月    最高裁(認容○)

ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。

  1. 原告(妻)の主張は?
  2. 第一審・控訴審の判決は?
  3. 最高裁の判決は?

原告(妻)の主張は?

原告である妻の主張はとてもシンプルです。夫が性交渉を試みるも、性交を遂げることができなかったというのです。

またその際に夫は焦燥感のため顔面蒼白になり、ただ妻の体の一部を撫で回すということが繰り返されたそうです。

さらにそのような状況が結婚してから1年半にわたり改善されなかったという経緯があり妻は夫に離婚を申し入れました。

第一審・控訴審の判決は?

第一審では、妻の主張は退けられていますが、その最大の理由は「妻が第一審では夫婦生活について主張しなかったから」です。

その後は控訴し、夫の関する詳しい状況について主張しました。結果として控訴審では性交不能の状況が「婚姻を継続しがたい重大な事由」であることが認められました。

裁判所は夫に生殖能力がないとわかった上で結婚したことを考慮しても、夫が性交を遂げることがきなかった事実を重く見たのです。

しかし夫は裁判所の離婚を認める判決に納得がいかなかっため最高裁に上告しました。

最高裁の判決は?

最高裁はこれまでの判決と同様に、離婚を認める判決を下しました。最高裁は「夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項」である点を明示したのです。

正常な性行為の範囲から逸脱した事例

正常な性行為の範囲から逸脱し、過度な性交渉を求められた妻が夫を訴えた事例を紹介します。

まずは、以下に基本情報を載せておきます。

裁判の流れ
  • 第一審
    ⇒妻(原告)が夫(被告)を訴えた
    【大阪地裁判決昭和35年6月23日】
夫婦の歴史
  • 昭和32年11月    婚姻(夫家族と同居)
  • 昭和32年12月    夫婦のみで生活開始
  • 昭和33年1月      別居
  • 昭和35年6月         第一審(認容○)

ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。

  1. 原告(妻)の主張は?
  2. 第一審の判決は?

原告(妻)の主張は?

妻の主張は、周囲を驚かせるものでした。性交に際し「必ず靴を履くこと」を強要され、また「過度に渡る性交渉を求められた」というのです。

妻は夫の要求に対し「はなはだしい険悪感」や「深刻な苦痛を感じた」ため離婚を求めたのです。

第一審の判決は?

第一審の判決では、妻の主張を認めて離婚を認める判決を下しています。

第一審では、妻に靴を履かせたままの性交を正常な性行為の範囲に属するものということはできないとした上で、「性生活について夫婦間にまったく絶望的な不調和が存在する」とコメントしています。

ここでわたしたちが気になるポイントは「どこからどこまでが正常な性行為の範囲に属するのか?」ということでしょう。

もちろんどこまでが正常の範囲に属するか?という問いに一般的な判断基準があるわけではありません。

そのためこの事例で裁判所が重視したのは「妻の嫌悪感を全く無視し夫が自らの欲望を妻に押し付けた」という点だと解釈するのが自然でしょう。

つまり旦那の行為が「離婚するしかその被害を回避する方法がない・・・」といった具合に妻を追いつめてしまったため、裁判所は「将来的に円満な結婚生活を期待することは不可能」と判断したのです。

性交不能を妻に告知しなかった事例

性交不能である夫が、妻から離婚を請求された事例を紹介します。

まずは、以下に基本情報を載せておきます。

裁判の流れ
  • 第一審
    ⇒妻(原告)が夫(被告)を訴えた
    【京都地判昭和62年5月12日】
夫婦の歴史
  • 昭和55年10月    お見合い
  • 昭和56年11月    同居
  • 昭和56年12月    結婚
  • 昭和60年6月      別居
  • 昭和62年5月         第一審(認容○)

ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。

  1. 原告(妻)の主張は?
  2. 第一審の判決は?

原告(妻)の主張は?

夫は結婚してから1年2か月後から泌尿器科、精神科、性科学研究所などに通い治療しました。しかしその後も夫の性交不能が治癒しませんでした。結果、同居期間中の約3年半の間一度も性交渉がありませんでした。

「性的に不能」であることを隠して結婚した旦那を許すことができなかった妻は、離婚を請求するだけでなく200万円もの慰謝料を請求しました。

第一審の判決は?

第一審では、婚姻が「男女の精神、肉体的結合」だと判断しました。つまり婚姻後長年に渡り性交渉のないことは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとしています。(ただし、当事者同士が病気や老齢などの理由から性関係を重視しないことに合意しているなどの特段の事情がない場合はその限りではない。)

この判決で注目すべきなのは、慰謝料請求を認めていることです。慰謝料を認めた理由について、裁判所は以下のように述べています。

慰謝料について、一般には、事実の単なる消極的不告知が不法行為となることはないというべきであるが、告知されなかった結婚の条件が、婚姻の決意を左右すべき重要な事実であり、その事実を告知することによって婚姻できなくなるであろうことが予想される場合には、その不告知は、信義則上違法の評価を受け、不法行為責任を肯定すべき場合がありうると解するのが相当である。

婚姻生活の性関係の重要性、さらには、性交不能は子供をもうけることができないという重要な結果に直結することに照らすと、婚姻に際して相手方に対し自己が性的不能であることを告知しないということは、信義則に照らし違法であり、不法行為を構成すると解するのが相当である。

【判例時報1259号 92頁】

ひらたくいえば「性交渉不能という事実があらかじめ分かっていれば、妻は結婚しなかったのかもしれない。だから性交渉不能であることを伝えなかった旦那の一連の行為は不法行為といえる」ということです。

大人の雑誌にしか興味を示さない夫の事例

妻との性交渉を拒否するだけではなく、性生活以外でも異常な性癖を持っていた夫が、妻から離婚及び慰謝料請求された事例を紹介します。

まずは、以下に基本情報を載せておきます。

裁判の流れ
  • 第一審
    ⇒妻(原告)が夫(被告)を訴えた
    【浦和地判昭和60年9月10日】
夫婦の歴史
  • 昭和52年3月      結婚
  • 昭和53年12月    長男出生
  • 昭和54年頃        性生活が少なくなる
  • 昭和56年1月      二男出生
  • 昭和58年3月    別居
  • 昭和60年9月         第一審(認容○)

ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。

  1. 原告(妻)の主張は?
  2. 第一審の判決は?

原告(妻)の主張は?

夫は昭和54年頃から大人向けの雑誌に異常な関心を示し始め、一人で部屋に閉じこもり、妻との性交渉を拒否するようになりました。

そして夫には夫婦生活以外にも、例えば他人のものを盗んだり、落ちているガムを拾って子供に与えるなどの異常な性癖があることがわかりました。

それらの事情に耐えきれなくなった妻は、離婚を前提とした話し合いをしたのですが、夫がこれまでの生活を改めることを約束したため、一旦は離婚を思い留まることにしました。

しかしその後も夫の性癖が改善することがなかったため、妻は離婚と500万円の慰謝料請求を求めました。

第一審の判決は?

裁判所は、夫婦関係が破たんした原因は、もっぱら夫にあるとしました。その結果、離婚と慰謝料を認めました。

慰謝料が比較的高額の500万円で満額認容されているのは、夫の異常な行動に加えて、関係改善に向けた妻の努力を夫が何ら省みなかった点が反映されていると考えられます。

また性生活がほとんどなくなったと主張している時期以降に、二男が出生しているのに、性の不一致を認めている点も注目に値します。もう一人子供が欲しかった妻が、夫に頼んで性交渉に応じてもらったという経緯があるのです。

つまり子作りのための性交渉に応じていたとしても、それ以降の性交渉がなければその他の事情も踏まえた上で離婚が認められる可能性を示唆しています。

「子供がいるから性の不一致が認められないのだろうか?」と悩んでいる方にとっては、非常に心強い判決だといえるかもしれません。

性の不一致で慰謝料請求できるのか?

姓の不一致で慰謝料請求が認められたケースは存在します。

昭和62年5月12日の京都地裁の判決では200万円の慰謝料が認められています。(参照:性交不能を妻に告知しなかった事例)

昭和60年9月10日の浦和地裁の判決では500万円の慰謝料請求が満額認容されています。(参照:大人の雑誌にしか興味を示さない夫の事例)

性の不一致で慰謝料が認められた事例を振り返ってみると、以下のような共通点があることがわかります。

慰謝料が認められる要素
  • 信頼関係の回復が難しい
  • 性の不一致に正当な理由がない
  • 信頼関係構築に向けた努力をしていない

以上のような事情に心当たりがある場合には、離婚請求と同時に慰謝料の請求を検討するとよいでしょう。

性の不一致の養育費・子供の親権

離婚理由と「養育費」や「親権」には、ほとんど関連性がありません。

性の不一致を引き起こした側だからといって、養育費を多く支払うべきとか、子供の親権を持つのにふさわしくないということは一切ありません。

まとめ

性の不一致で離婚できた事例を中心に紹介しました。性の不一致で離婚したい方、慰謝料を請求したい方の手助けになれば幸いです。

なお性の不一致の他に、どのような理由で離婚が認められるのか興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。

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