離婚調停にはさまざまなメリットがありますので、順に解説していきたいと思います。
話し合いのテーブルにつかせる
離婚協議の場合「話し合いを拒否される」ということは珍しいことではありませんが、そのような場合には調停を活用することで相手を話し合いの場につかせることが期待できます。
離婚調停の申し立てをすると、相手に「●年●月●日の●時に調停があるので●●裁判所にきてください。」と呼び出しの通知が送付されるのですが、このような呼び出しを無視する人はほとんどいません。
一般の人からすれば家庭裁判所から通知がくるということだけでも一大事なので、呼び出しに応じるほうが無視するよりもずっと精神的な負担が少ないです。
また離婚調停の話し合いを拒否すれば、離婚裁判を申し立てられるリスクを高めるだけでなく、「話し合いを拒否した」身勝手な印象を強めてしまうことにもなりかねませんので、離婚調停を無視するのは現実的ではありません。
リーズナブルな費用
調停を申し立てる費用は合計で2,000円程度です。つまり公正証書の作成費用よりも大幅に金額を抑えることができます。
冷静に話し合いできる
離婚は夫婦の問題ですが、夫婦であるがゆえに感情的な対立を深めてしまうようです。「穏便に話し合おう」とどれだけ自分に言い聞かせても、相手の顔をみた瞬間にタガが外れてしまうようなケースも珍しくありません。
そのような時に、中立的な第三者(調停委員)に夫婦の間に入ってもらえれば、冷静な話し合いが期待できます。
論点(大事な問題)を整理できる
夫婦で話し合うべき問題はたくさんありますが、それらの問題のなかには些細な問題も多く含まれています。夫婦が二人で話し合うような場合には、「本当に重要な問題はなにか?」ということが見えずに話し合いが空転してしまうようなことはよくあることなのです。
夫婦二人で話し合う場合、些細な問題で泥沼の議論にハマってしまう理由は、夫婦がお互いに「手打ち」よりも「納得」を求めているからに他ならないわけですが、調停委員は常に「どうしたら本当に問題が解決するか?」(手打ち)ということを考えているため、効果的な話し合いを期待することができます。
本気度が伝わる
相手に「離婚したい」と伝えたところで、相手方にとってはあなたの言葉がどこまで本気なのか計り兼ねるところがあります。
先方にとって「あなたからの離婚の申し出」が寝耳に水であればあるほど、あなたがどれだけ離婚について思い悩んだか考えることもせず、「夫婦である以上、離婚したくなることぐらい一度や二度あるものだ。」と軽く扱われてしまう可能性が高いのです。
もしあなたが離婚調停を申し立てれば、くどくど説明するまでもなく、あなたの離婚に対する本気度を伝えることができるでしょう。
直接顔を合わせなくていい
夫婦関係が壊れている場合、相手と直接顔を合わせたくないということは珍しくありません。特にモラルハラスメントやDV被害を受けている場合や、相手方が浮気をしているような場合は、「生理的に無理」という場合もあるでしょう。
協議離婚する場合には弁護士に間に入ってもらえば直接顔を合わせなくても相手方と議論を重ねることも可能ですが、弁護士を雇う場合には費用も高額になりますので、調停を活用するメリットは十分あります。
離婚調停では、調停委員が申立人・相手方から交互に話を聴き、申立人話を要約して、相手方に伝えていくという進め方をしてくれるので直接顔を合わさないまま話し合いを進めることができます。
裁判所の考えを聞ける
離婚協議の場合、どちらか一方が法外な要求をするということは珍しくありません。例えば相場の10倍以上の慰謝料を請求したり、親権を一方的に奪い取ろうとする行為も珍しくありません。(妊娠中の女性が夫から「子どもを産んだら親権を放棄して離婚し、姿を消してくれ」とお願いされたというケースもありました。)
当事者だけの話し合いでは、自分の主張や相手の主張が、はたして妥当なものなのかどうかがよくわからずに不安になることもあると思いますが、調停では調停委員の考えを聞くことができるというメリットがあります。
家庭裁判所の見解をキチンと知りたければ、調停案を出してもらうというのも一つの選択肢です。調停案は、当事者双方の言い分を前提にして調停委員会による評議を経て決められた解決策ですので、まさに裁判所が妥当と考えている解決策になります。

但し、あなたが裁判所の「法的に公正で妥当な結論」から逸脱した要求をする場合には、家庭裁判所の見解を知ることは逆効果になりますので注意しましょう。
財産の開示
財産分与が争点になる時、相手が素直に財産を開示しないことも珍しくありませんが、調停委員から財産開示を求められればウソをつきにくくなります。
子どもの将来
離婚する場合、「子どもの将来にとってどのような選択肢を採用することが望ましいのか?」という点について、当事者である親でもわからなくなることがあります。
離婚調停で子の親権や面会交流について争いがある場合には、家庭裁判所調査官(心理学や社会学の専門家)が子どもの意向を調査するなどして、裁判官宛ての報告書を作成します。
離婚調停には専門家である家庭裁判所調査官の意見を聞くことができるというメリットもあるのです。
約束が守られやすい
離婚協議の場合は「言った言わない」の議論になりがちですが、離婚調停の場合は約束が守られやすくなります。
なぜならば調停調書に記載された内容は、裁判所という公の場所で、裁判官や調停委員という公的な立場の人の前で約束するのため、言い逃れのしようがないからです。
強制執行できる
離婚調停が成立すれば調停調書が作成されますが、調停調書は公的な書類であり、相手が約束を守らなかった場合には強制執行することもできます。
最後に
離婚調停というと「もめた時に利用するもの」というイメージがあるかもしれませんが、もめていなくても離婚調停を利用することは可能です。
離婚調停のメリットを享受するために、調停の活用を検討してみてはいかがでしょうか?