離婚を説得するコツは、ズバリ「相手の立場になること」です。今回は「浮気した妻」の事例でそのことを解説したいと思います。
浮気を追求すると逆切れ
浮気するのは「男性」という先入観があった時代はすでに終わり、現代では女性の浮気も珍しくありません。
ある男性は妻の交友関係を疑い、興信所に調査を依頼した結果、妻が浮気している事実を突き止めました。
男性は「どういうことなんだ!」と奥さんを問い詰めましたが、奥さんは「だから何なの!?」と逆上し、実家へ戻ってしまいました。
当初は「離婚する」という選択肢はなく奥さんを許そうと思っていた旦那さんでしたが、別居が1年近くにもなると「もう無理かもしれない」と考えるようになり、奥さんに離婚を提案するのですが・・・・旦那さんの予想に反し、奥さんからは無視されてしまうのでした。
旦那さんは「浮気をしたのは妻であり、身勝手に別居を開始し、夫婦関係を修復しがたくなるまで壊したのも妻。だから自分には慰謝料を要求する権利はあるし、別居がこのまま続くなら離婚しかないではないか・・・・妻は一体何を考えているのだ?」と思いつめるようになってしまいました。
旦那さんがインターネットで情報収集していると「婚姻費用」(こんいんひよう)という仕組みがあり、自分が婚姻費用を支払わないといざ離婚を申し立てる時において不利になることを知り毎月10万円弱ものお金を奥さんの銀行口座に振り込むのでした。
しかし別居が1年近くも続くと「いつまで婚姻費用を支払わなければいけないのか?」という気持ちになり、この先の見通しがつかないことにやるせなさと漠然とした不安を感じるのでした。
なぜ?妻は離婚に応じないのか?
旦那さんは粘り強く説得を続ける心づもりでしたが、「なぜ?妻は離婚に応じないのか?」ということを改めて考えた結果、考えを改めました。
旦那さんは以下のように考えました。
「そもそも浮気が発覚した時、妻に自分(旦那さん)への気持ちがあれば許しを乞うはずである。しかしそうなっていないということは、妻は自分に対する愛情や、今後も一緒に暮らすという選択肢は妻の頭の中にはないのだろう。」と。
「婚姻関係を続けるという選択肢がない以上、できるだけ早く新しい生活について考えるのが合理的な選択肢であるはず。もちろんすぐに再出発する準備は整わないので時間はかかるだろうが、すでに別居してから1年もの時間が経過しようとしている。」
「妻が離婚に応じないどころか対話にすら応じない理由は、感情的な対立が原因だろう。妻の性格を考えれば自分の言いなりになって離婚に応じるのは癪(しゃく)に障(さわ)るのだろうし、慰謝料だって支払いたくないだろうし、関係者に自分の浮気が原因で離婚に至ったことを知られたくもないだろう。」と。
「憎き夫」である自分の呼びかけに妻が応じてくれることはこれから先もないだろうと悟った旦那さんは離婚調停を申し立て、調停委員を介して以下の条件を提示しました。
- 慰謝料放棄
- 浮気を公表しない
結果、奥さんは2回目の調停で離婚に同意してくれたそうです。
最後に
客観的に離婚もやむなし(長期間の別居)という状況でありながらも、離婚が成立しない理由が「感情的な対立」である場合は、調停委員という利害関係のない第三者を介して調整を依頼するのは効果的な解決策です。
しかし離婚調停を申し立てたからといって簡単に離婚が成立するわけではありません。今回は「妻の立場」になって考えた結果、妻の秘密をあえて暴かずなおかつ金銭的な負担を要求しないかわりに、早期の離婚を優先したわけですが「旦那の立場」でも話は一緒です。
自分の正当性を主張することは大事なことですが、それで望む結果が得られるわけではありません。「相手の立場」になって考えることをくれぐれも忘れずに。