「配偶者の不倫」を原因として慰謝料を請求する手順をまとめています。是非とも参考にしてください。
- 妥当性の検討
- 不倫の証拠収集
- 交渉方法の検討
- 弁護士への相談を検討
それぞれについて順に解説していきます。
慰謝料請求の妥当性を検討
信頼していた配偶者の不倫が発覚すれば、慰謝料請求するのが当然・・・・と思うかもしれません。
しかし慰謝料を請求することが必ずしも合理的であるとは断言できません。実は・・・慰謝料請求した側が損をする可能性だってあるのです。
特に「請求相手にお金がない」場合には注意する必要があります。なぜならば裁判から慰謝料の支払い命令が出たとしても、「払えません」と相手に開き直られた場合、損害賠償金を回収するのが難しいからです。
浮気相手に財産開示請求をしようにも、財産を隠匿されてしまえば財産を捕捉する手立てはありません。(もちろん財産隠しが発覚した場合は、裁判所の判決がでてから時効までの10年間は支払いを求めることは可能です。)
また請求相手の両親や親族が資産家であったとしても、彼らに慰謝料の支払いを強制することはできません。
つまり慰謝料を「請求」することと「回収」することは別問題のため、慰謝料を回収できる可能性がないことがあらかじめわかっている場合には、慰謝料請求しないのが合理的な選択肢になる・・・ということもあるのです。
もちろん裁判で訴えれば、それだけで相手に精神的なプレッシャーを与えることが期待できますが、相手が『図太い』性格の場合は、その限りではありません。
不倫の証拠収集
配偶者が不倫をしている場合、是が非でも証拠を収集する必要があります。しかも「別居する前」に証拠をつかまなければいけません。
なぜならば「別居後」は夫婦生活が破たんしていると見なされるため、別居後に不倫の証拠を掴んだとしても慰謝料が認められない可能性があるからです。
ですから配偶者や浮気相手が「浮気はバレていない」と油断している時期に浮気の証拠をつかむことを心がけましょう。
慰謝料の交渉方法を検討
慰謝料を請求する際には、いくつかのパターンと注意点があります。
以下の図は「離婚するかしないか」、「交渉手段」、「慰謝料を誰に支払わせたいか」という3つの観点で、慰謝料請求のパターンをまとめたものになります。
#1) 話し合い
配偶者と離婚するにせよ、離婚しないにせよ、どちらの場合でも「話し合い」で決着がつくのであれば、それがベストだと思います。その理由は2つあります。
- 慰謝料の支払いを個別に設定できる
- 慰謝料の金額が相場に囚われない
メリット#1) 慰謝料の支払いを個別に設定できる
離婚調停にて配偶者への慰謝料請求が認められたとしても、その慰謝料は配偶者と浮気相手の連帯責任となります。そのため慰謝料の全額を「浮気相手」ではなく「配偶者」が支払っても問題はないわけです。
ですからもしもあなたが浮気相手にも慰謝料を支払わせたいと願うのであれば、配偶者に「●●万円」、浮気相手に「●●万円」といった具合に慰謝料の金額を「個別」に設定するようにしましょう。
メリット#2) 慰謝料の金額が相場に囚われない
不倫による慰謝料請求の相場は、相手が一方的に悪い場合でも300万円程度が相場です。
しかし当事者同士が話し合いにより金額に合意できるのであれば、慰謝料の金額が相場以上であってもOKです。
さて、話し合いで慰謝料を請求する場合のメリットについて解説してきましたが、デメリットもありますので確認しておきましょう。
- 慰謝料請求する相手を間違える
- 冷静に話し合えない
- 配偶者と浮気相手の両方と話し合う必要アリ
デメリット#1) 慰謝料請求する相手を間違える
相手を訴えるという場合には証拠を用意するのが一般的ですが、話し合いともなるとそうとも限りません。ですから『慰謝料を請求する相手を間違える』という可能性もあるのです。
浮気相手である確証が得られないままに、浮気相手の社会的評判を陥れることがあれば逆に訴えられてしまいます。くれぐれも注意しましょう。
デメリット#2) 冷静に話し合えない
自分では冷静に話し合えると思っていても、いざ浮気相手と対峙すると理性が吹っ飛ぶ場合もあるそうです。
例えば浮気相手への暴力行為に及んでしまい、逆に刑事事件として訴えられてしまうケースもあります。
デメリット#3) 配偶者と浮気相手の両方と話し合う必要アリ
慰謝料の金額とその金額の支払者については、配偶者と浮気相手の両者と同時に話し合う必要があります。
なぜならば浮気相手から「わたしの慰謝料分は配偶者が支払っているはず。私には支払う理由がない」と主張される可能性があるからです。
以上、話し合いで慰謝料額を決める際のメリット・デメリットをお伝えしましたが、話し合いで決着をつける場合は、口約束だけでなく「公正証書」に記録を残すことを忘れないでください。
なぜならば公正証書があれば約束が破られた時に強制執行することが可能なため、相手方に「逃げられない」というプレッシャーを与えることができるからです。

さて話し合いで決着がつかない場合には、「離婚するか」、「離婚しないか」を考えてください。なぜならば離婚するかしないかにより、訴えを起こす裁判所が異なるからです。
まずは「離婚しない」を選択した場合の慰謝料請求の方法について説明します。
#2) 「離婚しない」で慰謝料請求する場合
離婚しないで慰謝料を請求する場合には、「簡易裁判所」もしくは「地方裁判所」に訴えを起こすことになります。
160万円までの訴えは簡易裁判所にて手続きすることになりますが、請求額はそれ以上の方が多いと思いますので「地方裁判所」だと考えておけばいいでしょう。
浮気相手を配偶者と個別に訴えるので、普通の損害賠償請求と変わりません。普通の損害賠償とは、物を壊されたので弁償してくださいといった類の裁判と一緒だという意味です。
#3) 「離婚する」のと一緒に慰謝料請求する場合
離婚するのと一緒に慰謝料請求する場合には、まず話し合いで離婚を目指す協議離婚に挑戦すべきです。
なぜならば離婚をすると決めた時点で、話し合うべき問題は慰謝料だけではなくなるからです。(「親権」、「面会交流権」、「財産分与」、「養育費」等)

なお仮に協議離婚を断念せざるを得ない場合には、家庭裁判所の「夫婦関係調整調停(離婚)」を利用することになります。
但し夫婦関係調整調停は、あくまで配偶者と第三者を通じた話し合いになるため、浮気相手と交渉するわけではありません。
そのため仮に離婚調停で慰謝料の金額が確定しても、慰謝料の配分(配偶者と浮気相手が支払う配分)は決められませんので留意する必要があります。
#4) 離婚裁判で浮気相手に慰謝料請求する場合
もし浮気相手にも確実に慰謝料を支払わせたいと思うのであれば、裁判で浮気相手を訴える必要があります。具体的には配偶者の離婚裁判に、浮気相手への裁判をくっつける形になります。
弁護士に相談するか検討
相手方と話し合うにせよ、「あなたから直接相手方と連絡する場合」と「弁護士先生から相手方と連絡する場合」とでは、相手に与える印象が大きく異なるなど、『弁護士』の肩書を利用するメリットは大きいです。
目指すべき交渉方法が決まったら、ぜひ一度、弁護士の先生に相談してみましょう。