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離婚準備のゴール

突然ですが質問です。

コインを投げて表がでたら150万円もらえる一方で、裏がでたら100万円を失うギャンブル」があるとします。あなたはこのギャンブルに挑戦するでしょうか?

中学生で学習する「期待値」の計算によれば「やる」のが合理的な決断になるはずです。なぜならばコインの裏表のでる確率がそれぞれ1/2だとすると、このギャンブの期待値は+25万円になるからです。(+25万円 = +150万円×1/2 + -100万円×1/2)

しかし現実にはほとんどの人が「やらない」と回答します。おそらくあなたも同じ答えでしょう。なぜでしょうか?

2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンは、行動経済学という分野の先駆者であり、その理由を明らかにしました。

ダニエル・カーネマンが明らかにしたことはズバリ、「ほとんどの人間は、利益よりも損失を恐れる」というものです。これを損失回避性といいます。

ようするに人は論理的思考などしないのです。計算上、得であることが明らかだったとしても、リスクを冒さないほうを本能的に選んでしまうのです。

人間の本能

「ダニエル・カーネマン心理と経済を語る」(ダニエル・カーネマン著)という本を読むと、リスクについての考え方がよくわかります。

ダニエル・カーネマンが明らかにしたことをわかりやすく説明するとこういうことです。「人は利益を目の前にするとリスクを回避し、損失を目の前にするとリスクを選考しはじめる」。

この発見は日本人の実感とマッチするはずです。

「儲かるよ?」と他人からもちかけられても「本当かな?」と疑ってしまって、結局は「やらない」を選ぶのが人情というものです。

その一方で「もうすでに負けている」という状態にいる時には、「どうせ負けているんだから、ここは一発勝負して大逆転してやろう!」と考える傾向があるのです。

そう。ほとんどの人間は本質的には「カイジ」なのです。チャンスがあるのに挑戦せず、負けが確定したら人生逆転を狙うギャンブラーなのです。

【参考】映画版カイジ

離婚 ≒ ギャンブル?

もしあなたが「もう我慢できない」という状況に陥った末に「離婚」について考えているのであれば、「負けている」状況で「一発逆転を狙う」カイジのような思考にハマっていることになります。

もちろん一発逆転を狙って後先考えずに離婚に向けて行動した場合でも、幸せになれる可能性はあります。カーネマンの理論によれば、「人はリスクの2倍の利益があれば勝負にでる」といいます。

つまり利回り200%であれば、人はリスクをとって勝負にでるのです。例えば「配偶者からの暴力やモラハラに耐えられません。」とか、「配偶者との価値観の違いに耐えきれずに夜も眠れず鬱になりそうです。」という場合、今の生活を続けるよりは離婚するだけも幸せになれそうな予感がするのもうなづけます。

とはいえそもそも自分の人生をギャンブルにしたい人はほとんどいないはずですし、そもそも離婚したら今の生活よりマシな生活が待っているという保証はなにもありません。ではどうすればギャンブラー(カイジ)的な思考から抜け出すことができるでしょうか?

その疑問に答えるために、ダニエル・カーネマンと同様、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツの発見について紹介することにしましょう。

幸せなのはどっち??

突然ですが質問です。

Aさんは500万円の資産を保有していましたが、投資に失敗した結果、資産は300万円になりました。その一方で、Bさんは100万円の資産を保有していましたが、投資に成功した結果、資産は200万円になりました。AさんとBさんのどちらが幸せでしょうか?

ほとんどの人が直観的に「Bさんのほうが幸せに違いない」と答えます。Aさんは投資に失敗して資産を減らし、Bさんは投資に成功して資産を2倍に増やすことに成功したのですから、Bさんのほうが幸せに違いないというわけです。

しかしこの判断は本当に正しいのでしょうか?もし「Aさんは300万円の資産をもっています。Bさんは200万円の資産をもっています。どちらが幸せだと思いますか?」と質問されたら、あなたはきっと迷うことなく「Aさんのほうが幸せに違いない」と答えるはずです。

なぜ?わたしたちは最初の質問に「Bさんのほうが幸せに違いない」と考えてしまったのでしょうか?

絶対量より変化

ノーベル経済学者のハリー・マーコウィッツが発見したことは、「人間はいまいくらもっているか?ではなくいくら増えたか、いくら減ったかで幸福感が決まる」ということです。

少し脱線しますが、客観的にみればどこからどうみても幸せとしか思えないような人が、「自分は不幸だ」と思い悩み、場合によっては自ら命を絶つようなこともあります。

世間からすれば不思議で不思議でしょうがないわけですが、「絶対量」ではなく「変化」が幸福感を決めるということを知っていれば、不思議でもなんでもないでしょう。

むしろ客観的にみて幸せな人ほど、「もっと幸せ」になるためのハードルが上がるため、幸福感を手にすることが難しくなってしまうのです。

話を元に戻しましょう。あなたは信じたくないかもしれませんが、もしかしたらあなたも客観的にみれば幸せなのかもしれないのです。いや、きっとあなたは客観的にみれば「幸せ」だと判断できるような要素をもっているはずです。

なぜならばもし本当に「幸せ」だと判断できるような要素を何一つもっていないのであれば、それは離婚で失うものが何もない状態を意味するわけですから、「離婚しようかどうしようか?」とか「離婚して本当に幸せになれるのだろうか?」などと悩んでいないはずだからです。

離婚することで失うものがある。だからこそ「今すぐは離婚できない。離婚するために何かしら準備する必要があるはずだ。」と考えているのではないでしょうか??

幸せな離婚の条件

もし「幸せになるための離婚準備」というものがあるとしたら、どのような条件を満たす必要があるでしょうか?

これまで紹介してきたノーベル経済学受賞者の発見をヒントにして考えてみましょう。

まずハリー・マーコウィッツによれば「人間はいまいくらもっているか?ではなくいくら増えたか、いくら減ったかで幸福感が決まる」ということですから、「離婚しない場合の未来(現状維持)」と「離婚した場合の未来」を比較した時に、「離婚した場合の未来」のほうが幸せだと信じられることが必要不可欠といえるでしょう。

またダニエル・カーネマンによれば「ほとんどの人間は、利益よりも損失を恐れる」ということですから、「離婚しない場合の未来(現状維持)」と「離婚した場合の未来」を比較した時に、少なくとも「離婚した場合の未来」のほうが2倍以上幸せである必要があります。

まとめると、「現状維持の未来」と「離婚した場合の未来」を比較した時に、「離婚した場合の未来」のほうが少なくとも2倍以上幸せだと信じることができる、という条件を満たすことが、幸せになるための離婚準備に必要な条件であるといえるでしょう。

もしあなたが「今の生活がイヤだから一発逆転」というギャンブラー的な発想で離婚と向き合うなら、わたしからアドバイスできることは何もありませんし、わたしができることはあなたの幸せを願って祈ることだけです。

その一方でもしあなたが「離婚してよかった」と思えるような未来をたぐりよせたいのであれば、もう少しお付き合いください。あなたがやるべき具体的かつ簡単な演習を紹介したいと思います。

あなたの離婚戦略

もう一度おさらいしましょう。「幸せになるための離婚準備」のための条件は、『「現状維持の未来」と「離婚した場合の未来」を比較した時に、「離婚した場合の未来」のほうが少なくとも2倍以上幸せだと信じることができる』というものでした。

ではこの条件を満たすために、具体的に何をすべきでしょうか?

あなたがやるべきことは実は、とてもシンプルです。以下の図の空欄を埋めることが、あなたが離婚準備でやるべきことです。

【(あなたの)離婚戦略図】

あなたがやるべきことはとてもシンプルです。

まず最初に「離婚しなかった場合の未来では実現できないが、離婚した場合の未来では何がなんでも実現したいこと」を★(オレンジ色)のなかに書いてください。

次にあなたが★(オレンジ色)のなかに書き入れた「実現したいこと」を現実のものにするために「達成すべき目標」を、楕円形の●(青色)のなかに書いてください。

あなたがやるべきことはとてもシンプルなのですが、事例がないとわかりずらいと思うので、ある女性のエピソードを紹介しながらイメージをつかんでいただきたいと思います。

事例)転職の戦略図

ある女性は公認会計士として働いていました。しかしあることがキッカケで、マッキンゼーという外資系の戦略コンサルタント会社に転職することにしました。

外資系の戦略コンサルタントという職業は激務です。しかも彼女はシングルマザーであり、子どもの保育園の送り迎えも自分でやらなければいけません。

さらに彼女にとっての問題は、外資系企業に勤めていながら「英語が苦手」ということでした。もちろん英語を上達させなければ、せっかく転職した高年収が見込める外資系企業をクビにされても文句はいえません。

彼女はどのような努力をしたでしょうか?

彼女は競争の激しい外資系企業で生き残るためにがむしゃらに働きました。いい母親であるために子どもの世話もちゃんとやりました。会社をクビにならないように、がむしゃらに英語を勉強しました。

この彼女の名前は「勝間和代」(かつま かずよ)さんといいます。著述家・評論家・プロ雀士でもあり、著書の累計発行部数は500万部を超えているので、存在を知っている人も多いでしょう。

現在はYouTubeでも「賢く生きるための情報」を積極的に発信している彼女ですが、あるセミナーで勝間和代さんにこんな質問をした人がいました。「目標を達成するために、いろいろなルールを自分に課すという生活は正直、ツラくありませんか?」と。

勝間和代さんのセミナーに参加している時点で、そのセミナー参加者は勝間和代さんの主張に何かしら共感しているはずです。しかし勝間和代さんに好意的であるはずのセミナー参加者ですら、「勝間和代さんはメチャメチャ頑張っている。なぜ?ストイックに頑張れるのだろうか?」と疑問に思ってしまうのです。

果たして勝間和代さんにとって、頑張ること自体が「生きがい」なのでしょうか?もちろん勝間和代さんは頑張ること自体が好きだから頑張っている・・・というわけではないでしょう。

勝間和代さんが会計士から戦略コンサルタントに職業を変えた理由は、本人曰く「両親が自分に提供してくれた何不自由のない生活水準を、会計士のままでは自分の子どもには提供してあげられないことに気づいたから」だったのです。

もし勝間勝代さんが会計士のときに「外資系企業に入社する戦略図」を作成するとしたら、以下のようなものを作成するかもしれません。(あくまでもわたしの想像です。)

【転職の戦略図】

もう誰も止められない

勘のいい方ならお気づきかもしれませんが、離婚準備の本質は「離婚後の未来を創る」ことにあります。そして具体的にあなたがやるべきことは、離婚後の未来で「なにがなんでも実現したいこと」(★)と、それを実現するために「達成すべき目標」(●)を明らかにするなのです。

もしかしたら「なにがなんでも実現したいこと」(★)も、「達成すべき目標」(●)もすぐには見つからないかもしれませんが、もし見つからないのであれば・・・・まだあなたは離婚を真剣に検討するべきタイミングではないのでしょう。納得いくまで「(あなたの)離婚戦略図」と向き合ってください。

ちなみに離婚を真剣に検討するべきタイミングは、もし本当にそのタイミングがくればあなたにはわかるはずです。なぜならば・・・

「なにがなんでも実現したいこと」(★)や「達成すべき目標」(●)が自分の納得いくものになり、そのために離婚することが必要であると心の底から信じられた時、あなたはやるべきことを淡々と実行するはずだからです。

そしてその時にはあなたを止めることのできる人はもう誰もいないはずです。あなたには実現したいことがあり、そのためには離婚することが必要不可欠であり、そのために達成すべきことがわかっているのですから当然といえば当然といえるでしょう。。。(続く)