離婚の年金分割を図解で簡単解説!【仕組み・3号分割・手続き】

離婚 年金分割

離婚したら年金はどう分けるのが正解なのでしょうか?老後になれば、年金数万円の差が生活レベルに直結しますから真剣に考えなければいけません。

そこで本記事では「離婚時に年金をどう分けるのか?」をわかりやすく解説します。是非とも参考にしてください!

年金の構造(1)

年金の構造

年金の構造

まずは年金の構造について説明します。年金は三階建てになっていますが、1階建ての人もいれば、2階建ての人もいれば、3階建ての人もいますので、自分の年金がどうなっているか確認する必要があります。

まず1階部分は国民年金(基礎年金)です。自営業などは第1号被保険者、サラリーマンは第2号被保険者、第2号被保険者の配偶者を第3号被保険者などと分類されてはいますが、原則、成人した日本国民全員が加入する制度です。(生活保護や低所得などで免除されている場合を除く)

次に2階部分は厚生年金です。「家族に扶養されているので働いていません」という場合を除けば、社会人であるかぎり厚生年金に加入していると考えていいでしょう。

さらに3階部分は企業年金といわれる部分で、もともと企業年金といえば「退職金を分割して受け取る制度」のことでしたが、現在では「確定拠出型年金(企業型)」、「確定給付企業年金」、「厚生年金基金」、「退職年金給付」(公務員の場合)などのように名称を変えて存続しています。

年金の構造は?
  1. 国民年金
  2. 厚生年金・共済年金(公務員)
  3. 企業年金・確定拠出型年金

とはいえ年金が3階建てになっているのはいわゆる「大企業」に勤める一部の日本のサラリーマンに限ります。ほとんどのサラリーマンや公務員は、国民年金・厚生年金の2階建てでしょう。(自らの意思で個人型確定拠出年金に加入している場合を除く)

以上を踏まえて、「自営業者」、「サラリーマン」、「公務員」、「扶養されている妻」の年金構造を説明すると、以下のようになります。

年金_自営業の場合
  1. 国民年金(第1号被保険者)
  2. 付加年金・国民年金基金等(加入している場合のみ)
年金_一般的なサラリーマンの場合
  1. 国民年金(第2号被保険者)
  2. 厚生年金
年金_公務員の場合
  1. 国民年金(第2号被保険者)
  2. 共済年金

さらに一般的なサラリーマンや公務員の妻の年金は、以下のようになっていることが多いです。

妻の年金構成
  1. 国民年金(第3号被保険者)
  2. 厚生年金・共済年金(※ 勤務経験がある場合)
MEMO

ちなみに2017年4月から「個人型確定拠出年金」(「iDeCo」、イデコともいわれます。)が解禁されましたので、サラリーマンに扶養されている妻でも3階建ての年金構造にすることも不可能ではありません。

とはいえそのような対応をしている方は、すでに年金について詳しい知識をもっているでしょうから、これ以上の詳しい解説は省略したいと思います。

いかがでしたか?まずは、あなたとあなたの配偶者の年金構造について正確に把握しておきましょう!次に、年金を分割する方法について詳しく解説していきます。

年金分割・財産分与の対象(2)

年金分割は、「財産分与」の一部です。実は財産分与の方法は民法で明文化されているわけではないのですが、実務上は「婚姻期間中に築いた財産は半分ずつ」という原則が適用されています。

但し、原則はあくまでも原則でしかなく、原則の適用を巡って夫婦がもめることも珍しくありませんでした。例えば離婚した夫に対して妻から厚生年金を考慮した請求を行うことはできても、あくまでも「夫が受け取る年金から妻に支払う」という形だったため、夫が支払いに応じなければ、妻は泣き寝入りするしかありませんでした。

そこで2007年から導入されたのが「年金分割制度」です。年金分割制度によって、夫婦の合意によって年金分割の割合を決定し、社会保険事務所に請求することが可能になりました。また話し合いで合意が得られない場合には、家庭裁判所に申し立てを行い、審判や調停を経て決定することも可能になりました。

とはいえ「年金分割制度」を利用するためには夫婦の話し合いが必要になるという問題点がありました。そこでその問題点を回避する目的でが誕生したものが「3号分割制度」です。

「3号分割制度」により、2008年4月以降の厚生・共済年金部分については3号被保険者に自動的に配分されるようになりました。(但し、2008年3月以前の年金については「年金分割制度」されます。つまり話し合いによって決定する必要があります。)

まとめ
  1. 国民年金 ⇒ 夫婦個別に加入のため分割する必要なし
  2. 厚生年金・共済年金 ⇒ 2008年4月以降の部分のみ自動分割
  3. 企業年金・確定拠出型年金 ⇒ 財産分与で協議する必要アリ

年金分割の実例(3)

年金分割の実例

上図は、夫婦の就職結婚退職再就職離婚等のイベントを時系列で整理したものです。

同時に、厚生年金を「分割対象外」、「合意分割」、「自動分割」の3つに分類しています。夫、妻のそれぞれの立場になって厚生年金の分割方法を解説していきます。

夫の厚生年金の分割方法(3-1)

年金分割の実例

入社から結婚するまでは、分割対象外です。()また結婚~2008年4月までは合意分割の対象となります。(

さらに2008年4月~妻が再就職するまでの期間()は自動分割の対象となりますが、妻が再就職してから離婚するまでの期間()は合意分割の対象になります。

妻の厚生年金の分割方法(3-2)

年金分割の実例

妻の厚生年金のうち、入社から結婚するまで分割対象外です()。また結婚~2008年4月までは合意分割の対象となります()。さらに再就職してから~離婚するまでの部分は合意分割の対象です()。

年金分割に関する判例(4)

年金分割の割合について判例を交えながら解説します。

年金分割の割合
  1. 年金分割の按分割合
  2. 按分割合を0.5とした判例

年金分割の按分割合(4-1)

年金分割の一般的な割合(按分割合:あんぶんわりあい)はいくつでしょうか?

財産分与では、特別な事情がない限り「夫婦で半分ずつ」が基本です。年金分割も財産分与の1種である以上、年金は半分ずつにするのが基本です。

つまり、按分割合=0.5が基本です。仮に離婚調停で話し合っても、当然のように按分割合を0.5とする扱いがされます。

しかし、按分割合は必ず0.5で決着するわけではありません。ここからは、実際の判例をみていきます。

按分割合を0.5とした判例(4-2)

2つの判例
  1. 7年間の別居期間があった場合
  2. 13年間の別居期間があった場合

7年間の別居期間があった場合(4-2-1)

札幌高決平成19年6月26日の判例を紹介します。※ 参考:家月59巻11号186頁

婚姻期間約35年、定年退職前7年間別居、定年退職後は家庭内別居の夫婦の事例です。

第一審の判決では、按分割合を0.5とする判決が下りました。しかし別居期間中に支払った年金を半分ずつにする判決に、夫は納得がいきませんでした。

そのため夫は札幌高裁に抗告することにしたのです。しかし、裁判所は夫の訴え(抗告)を棄却しました。裁判所の言い分は以下のようなものです。

婚姻期間中の保険料納付や掛金の払い込みに対する寄与の程度は、特段の事情がない限り、夫婦同等とみ、年金分割についての請求割合を0.5と定めるのが相当であるところ、抗告人(夫)が主張するような事情が、保険料納付や掛金の払い込みに対する特別の寄与とは関連性がないから、上記の特段の事情に当たると介することはできない。

裁判所の主張をかみくだくと、以下のように要約できます。「婚姻していれば、別居期間中であっても年金の按分割合は0.5とするのが一般的

13年間の別居期間があった場合(4-2-2)

東京家審平成20年10月22日の判例を紹介します。※ 参考:家月61巻3号67頁

婚姻期間30年のうち13年間別居していた夫婦の事例を紹介します。裁判所は、年金の按分割合を0.5と命じました。裁判所の言い分は以下のようなものです。

別居後も、当事者双方の負担能力にかんがみ相手方(夫)が申立人(妻)を扶養すべき関係にあり、この間、申立人が相手方に対し扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は見当たらないから、別居期間中に関しても、相手方の収入によって当事者双方の老後等のための所得保障が同等に形成されるべきであったというべきである。

以上、裁判所の言い分で注目すべき箇所が1つだけあります。

注目すべき箇所

扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は見当たらないから

裏を返せば、信義則に反する事情があれば按分割合が0.5でない可能性があるということです。信義則に反する事情の代表例は「不貞行為」です。

例えば妻が不貞行為に及び、夫以外の異性と交際するために別居をしたら?信義則に反した妻に対して、半分の年金受給を認めない判決が下る可能性はあります。

年金分割の手続き(5)

年金分割の手続きは、4ステップで完了します。

年金分割の4ステップ
  1. 必要書類の提出
  2. 年金分割の情報提供通知書を入手
  3. 按分割合を決定する
  4. 年金事務所で手続きをする

必要書類の提出(5-1)

年金分割で必要となる書類を準備しましょう。

必要書類を準備しよう!
  • 年金分割の情報提供請求書
  • 本人確認書類(請求者本人)
  • 年金手帳
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本)

「年金分割のための情報提供請求書」は年金機構のサイトで入手可能です。サイト最下部からをダウンロードできます。

参考 離婚時の年金分割日本年金機構

なお「年金分割のための情報提供請求書」は自力で書き上げるのが難しい書類です。できることなら、年金事務所に出向いて記入方法を教えてもらうのが無難でしょう。

年金分割の情報提供通知書を入手(5-2)

書類の提出から1ヶ月以内には「年金分割の情報提供通知書」が届きます。

配偶者に年金情報を請求していることを知られたくない場合には送付先を指定しましょう。なお「年金分割の情報提供通知書」は請求者本人のみに送付されます。

つまり分割される側が「年金がいくら減るか」は知ることはできないのです。分割される側の年金支給額を知りたければ、同様の書類を別途提出する必要があります。

その結果は「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」で知ることができます。

按分割合を決定する(5-3)

情報通知書には「按分割合の範囲」が記載されています。按分割合の範囲内で、年金記録を分割する割合(按分割合)の合意ができます。

通常であれば、按分割合は0.5(半分ずつ)で落ち着きます。ただし、按分割合が0.5で決着しないこともあります。なぜならば、離婚協議の内容は年金だけではないからです。

親権、面会交流権、慰謝料の支払い等を考慮した結果、按分割合を譲歩することもあります。なお、夫婦間の協議で決着がつかない場合は、家庭判所に調停申し立てることも可能です。

ただし、調停では年金だけではなくその他離婚条件ついても話し合うことが一般的です。なお、離婚調停の詳しい解説は以下の記事をご覧下さい。

年金事務所で手続きをする(5-4)

標準報酬改定請求書」を離婚後に年金事務所に提出すれば、手続き完了です。しかし、手続き方法は以下のパターンのいづれかで多少異なります。

手続きの2パターン
  1. 協議で按分割合を決めた場合
  2. 調停・審判・裁判離婚で決着した場合

協議で按分割合を決めた場合(5-4-1)

協議で按分割合を決めた場合には、離婚後に夫婦で年金事務所に出向きます。手続きに必要な書類は2つです。

  • 双方の戸籍謄本
  • 双方の年金手帳

夫婦ふたりで年金事務所に出向けない場合には、どうすれば良いでしょうか?その場合は、年金分割について夫婦で合意したことを証明する書類が必要になります。

具体的には、公正役場で作成した公正証書などが必要になります。ただし、公正証書の作成には費用も手間もかかります。夫婦一緒に年金事務所に出向くのが一番お互いにとって負担がない選択肢です。

調停・審判・裁判離婚で決着した場合(5-4-2)

調停・審判・裁判で決着した場合には、1人で手続きすることが可能です。必要な書類は、以下の3点です。

  • 双方の戸籍謄本
  • 双方の年金手帳
  • 調停や裁判による決定事項が記載された書類

なお年金分割の請求期限は、離婚日から2年以内と決められています。大事な年金ですから、是非とも妥協しないで協議・手続きを進めていきましょう。

最後に

以下の記事では、財産分与について詳しくまとめています。是非とも参考にしてください!