離婚の年金分割を図解で簡単解説!【仕組み・3号分割・手続き】

離婚 年金分割

離婚したら年金はどう分けるのが正解なのでしょうか?老後になれば、年金数万円の差が生活レベルに直結しますから真剣に考えなければいけません。

離婚を検討中のあなたは、年金分割について正確に理解する必要があります。本記事では「離婚時に年金をどう分けるのか?」をわかりやすく解説します。是非とも参考にしてください!

年金の構造(1)

まずは、年金の構造についておさらいしておきましょう!一部上場企業に勤めるサラリーマンや公務員は3階建ての構造になっています。

年金の構造は?
  1. 国民年金(第2被保険者)
  2. 厚生年金・共済年金
  3. 企業年金・確定拠出型年金

ただし、日本の大多数のサラリーマンは企業年金は用意されていません。自ら個人型確定拠出年金に加入していない限り、国民年金・厚生年金の2階建てでしょう。

一方で一般的なサラリーマン家庭の妻の年金は、以下のようになっています。

妻の年金構成_一般
  1. 国民年金
    (第3号被保険者)
  2. 厚生年金・共済年金
    (※ 勤務経験がある場合に限る)

なお2017年4月から「個人型確定拠出年金」が解禁されました。個人型確定拠出年金は「iDeCo」(イデコ)ともいわれます。

解禁の対象となったのは、主婦や企業年金のないサラリーマンです。そのためサラリーマン家庭の妻でも3階建ての年金構造にすることは可能です。

妻の年金構成_一般
  1. 国民年金
  2. 厚生年金
  3. 個人型確定拠出年金

いかがでしたか?まずは、あなた、あなたの配偶者の年金構造について正確に把握しておきましょう!

次に、年金を分割する方法について詳しく解説していきます。

年金分割・財産分与の対象(2)

年金分割は、「財産分与」の一部です。

実は、財産分与の方法は民法で明文化されているわけではありません。しかし実務上は「婚姻期間中に築いた財産は半分ずつ」という原則が適用されています。

但し、原則はあくまでも原則でしかありません。原則の適用を巡って夫婦がもめることも珍しくありませんでした。そこで、2007年から導入されたのが「年金分割制度」でした。

年金分割制度では、2008年4月以降の厚生・共済年金部分が自動的に分割されます。ちなみに、自動分割される制度は「3号分割制度」といわれます。

3号分割制度導入時は、離婚をためらっていた妻が離婚に踏み切るのでは?と注目されました。しかし、蓋を開けてみれば離婚に踏み切る女性はそれほど多くはありませんでした。

なぜだと思いますか?

大きな要因の一つは、3階建て部分(企業年金 等)は年金分割制度の対象外だったのです。3階建て部分(企業年金、確定拠出年金等)は、通常の財産分与で議論する必要があります。

また、2008年4月以前の厚生・共済年金部分は年金分割制度の対象外です。ちなみに、3号分割制度の対象外の年金を分割することを「合意分割制度」といいます。

2008年4月以前の厚生・共済年金部分は、通常の財産分与で議論する必要があります。少しややこしくなってきたので、これまでの話を整理しておきます。

まとめ
  1. 国民年金 ⇒ 夫婦個別に加入のため分割する必要なし
  2. 厚生年金・共済年金 ⇒ 2008年4月以降の部分のみ自動分割
  3. 企業年金・確定拠出型年金 ⇒ 財産分与で協議する必要アリ

婚姻期間中に築いた財産は、夫婦で折半するのが基本です。ただし、厚生年金の一部分だけは自動的に分割されると理解しておけば十分です。

いかがでしたでしょうか?理解を深めるために、年金分割制度の実例を解説していきます。

年金分割の実例(3)

年金分割の実例

年金分割の実例

上図は、夫婦の就職結婚退職再就職離婚等のイベントを時系列で整理したものです。

同時に、厚生年金を「分割対象外」、「合意分割」、「自動分割」の3つに分類しています。夫、妻のそれぞれの立場になって厚生年金の分割方法を解説していきます。

年金分割の方法
  1. 夫の厚生年金の分割方法
  2. 妻の厚生年金の分割方法

夫の厚生年金の分割方法(3-1)

年金分割の実例_再掲

年金分割の実例

入社から結婚するまでは、分割対象外です。(

また、結婚~2008年4月までは合意分割の対象となります。(

さらに、2008年4月~離婚するまでの部分は、自動分割の対象となります。(

妻の厚生年金の分割方法(3-2)

年金分割の実例_再掲

年金分割の実例

妻の厚生年金のうち、入社から結婚するまで、分割対象外です。(

また結婚~2008年4月までは、合意分割の対象となります。(

さらに、2008年4月~離婚までに加入実績があれば合意分割の対象です。(

⑥の部分が自動分割でなく、合意分割である点は注目すべきです。

実は、3号分割制度は「第3号被保険者であった方からの請求」のみが対象となります。そのため、夫が3号被保険者の妻に対して、3号分割制度を求めることはできません。

年金分割に関する判例(4)

年金分割の割合について判例を交えながら解説します。

年金分割の割合
  1. 年金分割の按分割合
  2. 按分割合を0.5とした判例

年金分割の按分割合(4-1)

年金分割の一般的な割合(按分割合:あんぶんわりあい)はいくつでしょうか?

財産分与では、特別な事情がない限り「夫婦で半分ずつ」が基本です。年金分割も財産分与の1種である以上、年金は半分ずつにするのが基本です。

つまり、按分割合=0.5が基本です。仮に離婚調停で話し合っても、当然のように按分割合を0.5とする扱いがされます。

しかし、按分割合は必ず0.5で決着するわけではありません。ここからは、実際の判例をみていきます。

按分割合を0.5とした判例(4-2)

2つの判例
  1. 7年間の別居期間があった場合
  2. 13年間の別居期間があった場合

7年間の別居期間があった場合(4-2-1)

札幌高決平成19年6月26日の判例を紹介します。※ 参考:家月59巻11号186頁

婚姻期間約35年、定年退職前7年間別居、定年退職後は家庭内別居の夫婦の事例です。

第一審の判決では、按分割合を0.5とする判決が下りました。しかし別居期間中に支払った年金を半分ずつにする判決に、夫は納得がいきませんでした。

そのため夫は札幌高裁に抗告することにしたのです。しかし、裁判所は夫の訴え(抗告)を棄却しました。裁判所の言い分は以下のようなものです。

婚姻期間中の保険料納付や掛金の払い込みに対する寄与の程度は、特段の事情がない限り、夫婦同等とみ、年金分割についての請求割合を0.5と定めるのが相当であるところ、抗告人(夫)が主張するような事情が、保険料納付や掛金の払い込みに対する特別の寄与とは関連性がないから、上記の特段の事情に当たると介することはできない。

裁判所の主張をかみくだくと、以下のように要約できます。「婚姻していれば、別居期間中であっても年金の按分割合は0.5とするのが一般的

13年間の別居期間があった場合(4-2-2)

東京家審平成20年10月22日の判例を紹介します。※ 参考:家月61巻3号67頁

婚姻期間30年のうち13年間別居していた夫婦の事例を紹介します。裁判所は、年金の按分割合を0.5と命じました。裁判所の言い分は以下のようなものです。

別居後も、当事者双方の負担能力にかんがみ相手方(夫)が申立人(妻)を扶養すべき関係にあり、この間、申立人が相手方に対し扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は見当たらないから、別居期間中に関しても、相手方の収入によって当事者双方の老後等のための所得保障が同等に形成されるべきであったというべきである。

以上、裁判所の言い分で注目すべき箇所が1つだけあります。

注目すべき箇所

扶助を求めることが信義則に反していたというような事情は見当たらないから

裏を返せば、信義則に反する事情があれば按分割合が0.5でない可能性があるということです。信義則に反する事情の代表例は「不貞行為」です。

例えば妻が不貞行為に及び、夫以外の異性と交際するために別居をしたら?信義則に反した妻に対して、半分の年金受給を認めない判決が下る可能性はあります。

年金分割の手続き(5)

年金分割の手続きは、4ステップで完了します。

年金分割の4ステップ
  1. 必要書類の提出
  2. 年金分割の情報提供通知書を入手
  3. 按分割合を決定する
  4. 年金事務所で手続きをする

必要書類の提出(5-1)

年金分割で必要となる書類を準備しましょう。

必要書類を準備しよう!
  • 年金分割の情報提供請求書
  • 本人確認書類(請求者本人)
  • 年金手帳
  • 婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本)

「年金分割のための情報提供請求書」は年金機構のサイトで入手可能です。サイト最下部からをダウンロードできます。

参考

離婚時の年金分割日本年金機構

なお「年金分割のための情報提供請求書」は自力で書き上げるのが難しい書類です。できることなら、年金事務所に出向いて記入方法を教えてもらうのが無難です。

年金分割の情報提供通知書を入手(5-2)

書類の提出から1ヶ月以内には「年金分割の情報提供通知書」が届きます。

配偶者に年金情報を請求していることを知られたくない場合には送付先を指定しましょう。なお「年金分割の情報提供通知書」は請求者本人のみに送付されます。

つまり分割される側が「年金がいくら減るか」は知ることはできないのです。分割される側の年金支給額を知りたければ、同様の書類を別途提出する必要があります。

その結果は「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」で知ることができます。

按分割合を決定する(5-3)

情報通知書には「按分割合の範囲」が記載されています。按分割合の範囲内で、年金記録を分割する割合(按分割合)の合意ができます。

通常であれば、按分割合は0.5(半分ずつ)で落ち着きます。ただし、按分割合が0.5で決着しないこともあります。なぜならば、離婚協議の内容は年金だけではないからです。

親権、面会交流権、慰謝料の支払い等を考慮した結果、按分割合を譲歩することもあります。なお、夫婦間の協議で決着がつかない場合は、家庭判所に調停申し立てることも可能です。

ただし、調停では年金だけではなくその他離婚条件ついても話し合うことが一般的です。なお、離婚調停の詳しい解説は以下の記事をご覧下さい。

年金事務所で手続きをする(5-4)

標準報酬改定請求書」を離婚後に年金事務所に提出すれば、手続き完了です。しかし、手続き方法は以下のパターンのいづれかで多少異なります。

手続きの2パターン
  1. 協議で按分割合を決めた場合
  2. 調停・審判・裁判離婚で決着した場合

協議で按分割合を決めた場合(5-4-1)

協議で按分割合を決めた場合には、離婚後に夫婦で年金事務所に出向きます。手続きに必要な書類は2つです。

  • 双方の戸籍謄本
  • 双方の年金手帳

夫婦ふたりで年金事務所に出向けない場合には、どうすれば良いでしょうか?その場合は、年金分割について夫婦で合意したことを証明する書類が必要になります。

具体的には、公正役場で作成した公正証書などが必要になります。ただし、公正証書の作成には費用も手間もかかります。夫婦一緒に年金事務所に出向くのが一番お互いにとって負担がない選択肢です。

調停・審判・裁判離婚で決着した場合(5-4-2)

調停・審判・裁判で決着した場合には、1人で手続きすることが可能です。必要な書類は、以下の3点です。

  • 双方の戸籍謄本
  • 双方の年金手帳
  • 調停や裁判による決定事項が記載された書類

なお年金分割の請求期限は、離婚日から2年以内と決められています。大事な年金ですから、是非とも妥協しないで協議・手続きを進めていきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

年金は財産分与のほんの一部であることは忘れてはいけません。年金以外にも、マイホーム、退職金等も財産分与の対象です。

財産分与は、知っておくだけで得する知識が盛りだくさんです。以下の記事では、財産分与について詳しくまとめています。是非とも参考にしてください!