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モラハラ離婚成功に必要な知識8選&参考になる裁判事例

モラハラ 離婚

モラハラ被害に耐えられず離婚したいと願う人は少なくありません。なかには、何十年もの期間に渡りモラハラ被害に耐え続けている人もいます。

この記事は本気でモラハラ離婚を成功させたい人に向けて準備したものです。

モラハラ離婚の疑問
  • モラハラ被害とは?
  • 離婚して後悔しないか?
  • モラハラを立証する証拠は?
  • モラハラの慰謝料はどれくらい?
  • モラハラ離婚に弁護士は必要か?
  • モラハラ離婚で準備すべきことは?

本記事では、モラハラ離婚についてのさまざまな疑問について詳しく説明します。また記事の最後にはモラハラ・心理的虐待による離婚裁判例を解説していますので是非とも参考にしてください。

モラハラによる離婚率(1)

モラハラ離婚率はどれくらい?

モラハラ 離婚 割合

上図は家庭裁判所に離婚調停を申し立てた人の動機別の割合を図示したものです。「精神的に虐待する」を離婚調停の動機に挙げた人は、男性で18%、女性で24%です。

つまり離婚調停を申立てる人全体の2割が精神的な虐待で悩んでいる実態が浮き彫りになっているわけですが、そもそもモラハラとはなんでしょうか?

モラハラチェック(2)

あなたはモラハラ被害にあっているのでしょうか?この記事を読んでいる多くの方は、モラハラ被害にあっている自覚があると思います。

しかし中には、モラハラ被害を受けているに気付いていない人もいます。そのためどのような行為がモラハラと認定されることが多いかチェックしておくことをお勧めします。

以下の記事ではモラハラ被害者・加害者の特徴をそれぞれまとめていますので是非とも参考にしてください。

モラハラ被害者・加害者の特徴
モラハラチェックモラハラチェック!被害者・加害者の特徴とは?

モラハラ離婚を認めさせる法的根拠(3)

民法770条では、離婚を認める理由を5つ挙げています。

5つの離婚自由
  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復の見込みのない重度の精神病
  5. 婚姻を継続しがたい重大な事由

以上のうち「モラルハラスメント」がピッタリ該当する項目はありません。そのためモラハラによる離婚裁判では、「5 婚姻を継続し難い重大な事由」があることを主張することになります。

つまりモラハラ被害により直接的に離婚を主張するわけではなく、「モラハラ被害により夫婦関係が破たんしたので離婚を認めて下さい」とお願いするわけです。

「婚姻を継続し難い重大な事由」の具体的な定義について興味が湧くかもしれませんが、残念なんがらさまざまな事情により明確な基準はありません。

とはいえ、過去の裁判事例から裁判官が「この夫婦は婚姻関係が破たんしているか?」と判断するいくつかのポイントがあります。以下の記事にそれらをまとめていますので、興味があれば参考にしてください。

夫婦関係 破綻 定義夫婦関係破綻の定義とは?

モラハラで離婚して後悔しないか?(4)

モラハラで離婚して後悔しないか気にする人もいます。正直にいいますが、後悔するか気にするのであれば離婚はお勧めしません。

なぜならば、後悔しないか離婚前に気になる人は高い確率で離婚後に後悔するからです。そもそも離婚する意志が弱いと判断されれば調停で裁判でも「もう一度夫婦で話し合ってみたらどうですか?」と諭されてしまうでしょう。

もし現時点で離婚する決意を固めているわけではないのであれば、この記事でお役に立てることはありませんので、以下の記事を参考にしてください。

モラハラを立証する証拠は?(5)

モラハラを立証する証拠を箇条書きにしておきます。

モラハラを立証する証拠
  • 医師の診断書
  • 器物破損の写真
  • 暴言の録音
  • 書き留めた日記
  • 警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談履歴

医師の診断書があれば残しておきましょう。物理的な暴力がなくても、心理的虐待によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)などが残る可能性があります。

また直接暴力を振られなくても、暴言を吐かれる際に周囲のものを破損する行為があれば写真に残しておきましょう。

モラハラは決め手となる証拠が掴みにくい被害です。そのため、一つ一つのモラハラ被害を、どの程度積み重ねることができるかが大きなポイントになります。

ですから暴言を録音しておいたり、日記にモラハラ被害の詳細な記録を継続的に残しておくことも効果的です。

またモラハラ被害を受けていれば配偶者暴力相談支援センターに相談するのもおススメです。なお配偶者暴力相談支援センターには、全国相談ダイヤルが用意されています。相談する際には、以下の番号におかけください。

全国相談ダイヤル
  • 0570-0-55210

いきなり電話をかけるのは少し不安という方は、以下の記事をご覧ください。配偶者暴力相談支援センターの具体的な支援内容をまとめています。

モラハラの慰謝料はどれくらい?(6)

モラハラの慰謝料相場は、50万円~300万円程度といわれています。またモラハラ裁判の過去事例をみていると、離婚は認めても慰謝料請求は認めないケースが多数ありますので注意しましょう。

例えば裁判では以下のような趣旨のコメントがされることがあります。「モラルハラスメントが夫婦関係を破綻させた原因であることは認めるが、そのモラハラ行為が社会的に相当な範囲を超えて、不法行為として損害賠償の対象となる違法なものとまではいえない」

慰謝料が認められそうか認められなさそうかは、他にも様々な要因が作用するので一概にはいえません。

モラハラ離婚に弁護士は必要か?(7)

モラハラ離婚に弁護士が必要かどうかはモラハラ加害者の性格で決まります。離婚を相手に説得させることができれば弁護士は必要ありませんが、その一方で相手が離婚に絶対に応じない姿勢を崩さないような場合には、調停・裁判は避けられないでしょうし、当然、弁護士に相談もすべきでしょう。

なおモラハラ加害者の中には、被害者に対して異常なほどの興味を示す人がいます。別居を開始しても無言電話や付きまといなどのストーカー行為に及ぶことも珍しくありません。

そのような場合には、モラハラが物理的な暴力に発展したりストーカー行為などに及べば「逃げる」だけでなく、接近禁止命令を出してもらうことも検討する必要があります。

身の危険を感じながら幸せな生活を送ることは不可能ですので、もはや説得などでは事態が改善せずに、法的な力で離婚を求めるのであればまずは助けを多方面に求めてください。そして助けを求める時に重要なことは、自分の身は自分で守るという意識を忘れないことです。

「多方面に助けを求めましょう」というアドバイスと「自分の身は自分で守る意識を忘れるな」というアドバイスは矛盾しているように思えるかもしれません。

しかし警察ですら民事不介入を理由に安全を保障してくれるとは限らないのですし、24時間あなたを警護してくれるわけでもありませんので、注意しすぎるということはありません。

モラハラ離婚に向けた準備(8)

モラハラ離婚に向けた準備で一番重要なことを整理しておきます。モラハラ離婚で重要なことは2つです。

モラハラ離婚で重要なこと
  1. 証拠収集
  2. 離婚に対する知識

証拠収集(8-1)

モラハラ被害については、心理的虐待に当たる事実関係を多数積み重ねる必要性は既に説明したとおりです。証拠は多ければ多いほど、モラハラ被害の実態を浮き彫りにしてくれます。

もしかしたらあなたは、長い間モラハラ被害を受けているうちに、感覚が麻痺しているかもしれません。明確なモラハラ被害に遭っていても、モラハラ被害だと感じなくなっているかもしれません。

ですから相手から言われたモラハラ被害を立証できそうなものは全て記録に残しておくぐらいが丁度良いと思います。

離婚に対する知識(8-2)

離婚すればあなたの人生が幸せになるとは限らないのが離婚問題の難しさです。

モラハラ被害を理由に離婚を考えているうちは、離婚できるかできないかだけに興味があるかもしれません。しかし離婚すれば沢山のことに決着をつけなければなりません。

離婚で決着すべきこと
  • 離婚後の住まい
  • 慰謝料
  • 親権
  • 面会交流権
  • 養育費
  • 財産分与
  • 婚姻費用 etc

以上の事柄は、離婚する段階で全て決着をつけておく必要があります。

もちろん離婚後2年以内であれば権利を主張できるものもあります。しかし冷静になって考えて下さい。モラハラ加害者に離婚後に会って話をしたいですか?

どうしても離婚したい場合には、離婚を最優先することも可能ですが、その場合には離婚後にあなたを困らせようと報復を試みるモラハラ加害者と戦うことも覚悟しなければいけません。

モラハラの裁判事例(9)

モラハラの裁判事例を紹介していきます。

モラハラの裁判事例
  1. 心理的虐待に当たる事実を多数積み重ねて離婚を勝ち取った事例
  2. 心理的虐待と離婚請求との因果関係が明らかでないとされた事例
  3. 心理的虐待行為により生じた心理的負担を認定し離婚を認めた事例
  4. 心理的虐待を受けた側の事情を考慮した離婚裁判の事例
  5. 日常生活の言動が夫婦の信頼を壊すものと認定された事例

心理的虐待に当たる事実を多数積み重ねて離婚を勝ち取った事例(9-1)

東京地裁判決平成17年3月15日(公刊物未掲載)を紹介します。まずは、裁判の概要をまとめておきます。

裁判の流れ ・第一審
⇒妻(原告)が夫(被告)
【東京地裁判決平成17年3月15日】
夫婦の歴史 ・昭和58年5月    婚姻
・平成15年8月    妻が家出を開始
・平成15年9月    離婚調停申立て
・平成16年1月    夫に対して、妻へのつきまとい行為や妻の自宅や勤務先に立ち入ることを禁止する仮処分決定

この裁判は夫から長年にわたって身体的・精神的虐待を受け続けてきた妻による離婚請求です。裁判所は心理的虐待に当たる事実関係を多数認定した上で、妻からの離婚請求を認めました。

本件では妻に対する夫の常軌を逸しているともいえる虐待の様子が明らかになっています。離婚請求を認める主な要素として認定されている事実関係を箇条書きにしておきます。

離婚請求を認めた事実関係
  • 気に入らないと妻を執拗に責め続ける
  • 持病を持つ妻に「さっさと心臓移植でもしてこい」などの暴言
  • メニエール病で入院時に「人の不便も考えろ」などの暴言
  • 退院後に一晩中廊下に座らせて文句を言い、即頭部を平手打ちの暴行
  • その後、「いっそ、聞こえなくなる手術でもしてこい」などの暴言
  • 平成14年夏頃以降から深夜の炊事を要求
  • 要求に従わないとテーブルなどを叩いて眠らせない
  • 愛犬を叩いたり暴言を吐く
  • 妻の弟に対する非難と悪質性の高い暴言
  • 別居後の執拗で時間を選ばない架電
  • 別居後に「戻ってくるか、自分も死ぬか」の2択を迫る
  • 妻の勤務先への侵入未遂

以上に挙げた夫からの仕打ちに対して、離婚が認められるのは必然だったと思います。物理的な暴力・傷害行為に比べて、心理的虐待の場合は事実関係を多数積み重ねて戦う必要があります。

心理的虐待と離婚請求との因果関係が明らかでないとされた事例(9-2)

東京地裁判決平成17年3月14日(公刊物未掲載)を紹介します。まずは、裁判の概要をまとめておきます。

裁判の流れ ・第一審
⇒妻(原告)が夫(被告)
【東京地裁判決平成17年3月14日】
夫婦の歴史 ・昭和49年5月    婚姻
・平成15年8月    妻が離婚調停申立て
・平成15年11月    別居
・平成15年12月    調停不成立
・平成16年1月    夫に対して、妻へのつきまとい行為や妻の自宅や勤務先に立ち入ることを禁止する仮処分決定

この裁判は、夫に対して長年にわたり蓄積した不満を心理的虐待として主張した妻からの離婚請求です。妻が主張した夫からの心理的虐待は以下のようなものでした。

  • 家庭生活を送る上で、妻を対等なパートナーだと認めていない
  • 家事と育児をすべて妻に丸投げした
  • 妻が用意した食事を摂った後は、寝室に引きこもりゴロゴロしていた
  • 妻に対して生活費減額の嫌がらせをした
  • 精神状態の悪い娘を突き放し、妻をパニック状態に陥れた

以上の妻の主張に対して、裁判所は妻からの離婚請求を棄却しました。その一番の理由は、別居するまでの長期間(約29年以上)に渡って夫婦生活は概ね平穏だったということです。

つまり妻の主張は過去の出来事を蒸し返しただけであり、その出来事自体と離婚との因果関係が曖昧であると判断されたのです。また以下のような事情も妻からの離婚請求を棄却する判断に影響を与えました。

  • 別居の半年前に妻は夫の還暦祝いを企画していた
  • 夫との性交渉を受け入れる態度を示していた
  • 約30年の同居期間に対して別居期間が1年と短い
  • 夫婦いずれも万全な健康状態とはいえない

以上の事情により夫婦関係が完全に破綻しているとまではいえず、離婚を認めませんでした。

もしも心理的虐待により離婚請求をするのであれば、心理的虐待が行われた都度どのようなダメージを受けたか説明し、心理的虐待行為と離婚請求との因果関係を明確にする必要がありそうです。

心理的虐待行為により生じた心理的負担を認定し離婚を認めた事例(9-3)

東京地裁判決平成16年12月21日(公刊物未掲載)を紹介します。まずは、裁判の概要をまとめておきます。

裁判の流れ ・第一審
⇒妻(原告)が夫(被告)
【東京地裁判決平成16年12月21日】
夫婦の歴史 ・平成8年11月    婚姻
・平成10年1月    長男出生
・平成15年6月    別居
・平成15年10月    長女出生

この裁判は心身ともに耐え難い苦痛に苦しんでいた妻に対して、心ない言動をした夫に対する離婚請求です。

裁判では夫の行為が妻の婚姻関係を継続する気力と自信を喪失したとして離婚を認めました。妻が主張した夫からの心理的虐待行為は以下のようなものです。

  • 妻が風邪薬の胎児への影響を懸念して中絶した事実を、約束反して会社の同僚に口外した
  • 排卵誘発剤を服用して妊娠した際に、憔悴している妻を一方的になじった
  • 退院後も体調が悪く嘔吐を続ける妻を残し、夫は実家に帰った
  • 妻は夫からの庇護と理解が得られないことに絶望感を覚えた
  • 夫婦間の口論が絶えなくなった

裁判では上記の行為がなされるたびに、妻にどのような心理的な負担があり苦しんだのかを説明しています。

つまり夫による心理的虐待と婚姻関係破綻の因果関係を明確にできたことが、妻の離婚請求が認められたポイントになっている点に注目すべきです。

心理的虐待を受けた側の事情を考慮した離婚裁判の事例(9-4)

東京地裁判決平成16年11月2日(公刊物未掲載)を紹介します。まずは裁判の概要をまとめておきます。

裁判の流れ ・第一審
⇒妻(原告)が夫(被告)
【東京地裁判決平成16年11月2日】
夫婦の歴史 ・平成8年9月       婚姻
・平成13年1月     長女出生
・平成15年6月     別居

この裁判は、夫が飲酒時に妻やその家族を大声で罵倒するなどした結果、おとなしい妻がストレスをためてしまった事例です。精神的、肉体的に疲れ果てた末に妻は別居することを選び、離婚請求しました。

本判決では、以下の事情が認められています。

  • 夫は飲酒時に妻をなじったり、その家族の悪口をいった
  • 夫は酔いが回ると近所に聞こえるような声で妻を罵倒
  • 妻は実家とほとんど連絡をとらず、ストレス解消できなかった
  • ある時から夫の苛立ちが強くなり、妻を強くなじるようになった
  • 妻は精神的、肉体的に疲れ果ててて別居を開始した

判決では婚姻関係を円満に回復することは著しく困難であるとして、離婚を認めました。この裁判の特徴は、以下の2点です。

裁判の特徴
  1. 別居期間が比較的短いのに離婚が認められた
  2. 妻の事情が考慮された

別居期間が比較的短いのに離婚が認められた(9-4-1)

この裁判は、別居期間が約1年と数ヶ月と比較的短いのに離婚が認められた点が特徴的です。

つまり別居期間が長期に及ばなくても、心理的虐待行為の積み重ねを主張することで、離婚原因ありとの判決を勝ち取ることができる可能性を示唆しています。

離婚を認めてもらうためには、婚姻関係の破綻を別居で証明するだけではなく、心理的虐待の行為があったことを粘り強く証明することが大切だと改めて教えてくれます。

妻の事情が考慮された(9-4-2)

この裁判は、実際に心理的虐待をした側の行為だけではなく、心理的虐待を受けた側の事情も考慮している点が特徴的です。

判決では、妻はおとなしい性格で、面と向かって反論したり出来なかったため、夫の粗野な態度にストレスをためたと認定されています。

日常生活の言動が夫婦の信頼を壊すものと認定された事例(9-5)

東京地裁判決平成16年9月29日(公刊物未掲載)を紹介します。まずは、裁判の概要をまとめておきます。

裁判の流れ ・第一審
⇒妻(原告)が夫(被告)
【東京地裁判決平成16年9月29日】
夫婦の歴史 ・平成4年9月    婚姻
・平成12年10月    別居

この裁判は、別居後4年が経過した時点で妻が夫に対して行った離婚請求です。妻は夫から、以下のような心理的な虐待を受けていました。

  • 入籍してから継続的に執拗な暴行・傷害・脅迫を受けた
  • 旅行時に公共の場で大声で罵られ、置き去りにされた
  • 別居するまで日常的に侮辱・精神的虐待を受けた
  • 強度のストレスのため、右卵巣から出血し、心療内科への通院を余儀なくされた

以上の妻からの主張に対して、夫は「DVに匹敵する場合でなければ、婚姻関係を継続し難い重大な事由があるとはいえない」と裁判で主張しました。

夫の主張に対して、裁判所は「日常生活の言動が婚姻関係の継続に必要な夫婦の信頼を壊して修復し難いほどに至ることはありえる」と判断し、妻からの離婚請求を認めました。

なお妻からの離婚請求が認められた背景には、以下のような事情もあります。

  • 夫婦間の性交渉がほとんどもられなかった
  • 4年近く別居している間、夫婦関係を修復しようとした形跡がない

この裁判は、日常生活の言動が婚姻関係の継続に必要な夫婦の信頼を破壊して修復しえないほどに至れば、婚姻関係を継続しがたい重大な事由となりうると判断した点で、参考になる事例だと思います。

最後に

本記事で紹介した裁判事例をみてもわかると思いますが、心理的虐待による離婚請求においては、証拠を一つ一つ積み重ねることが非常に大切です。なにがなんでも「証拠」を掴んでください。