常識の破壊

三日坊主という言葉がありますが、三日という時間は大きなことを成し遂げる上で十分な時間ではありません。そもそも三日間で成し遂げられることを手に入れたところで、ほとんどの人は幸せを感じないでしょうし、他人から認められることもないでしょう。

3日よりも1か月、1か月よりも3か月、3か月よりも半年、半年よりは1年という時間を投下したほうが成功する可能性は高くなるでしょうし、そもそも本当に好きなことであれば3日どころか一生それに没頭したいと願うのも当然のことでしょう。

例えば『こち亀』の作者である秋本治先生は、40年間休まず週刊連載できた理由を問われて「目の前にあることをこなし、ひとつ ひとつ積み重ねること”。月並みかもしれませんが、これしかないのです。」とコメントしています。

元・メジャーリーガーのイチローさんは、引退会見でメジャーリーガーを引退した後の生活を問われて、「たぶん明日もトレーニングをしていますよ。それは変わらないでしょうね。」、「草野球を極める」と回答しました。本当に野球が大好きなんでしょう。

ボクシング世界王者の井上尚弥選手は「引退の日はもうダメだというくらい、打ちのめされボロボロになって終わりたい」、「心底、ボクシングを愛している」とインタビューに答えています。

あなたがプロの漫画家ではなくても、メジャーリーガーでなくても、ボクシングの世界王者ではなくても、何か一つのことを10年、20年とやり続けることができれば、「成功」する可能性はそれだけ高くなるでしょうし、それが自分の好きなことだったら「最高」ですよね???

しかし現実には『三日坊主』で終わる人がとても多いですし、何か目標を立てたところで「目標を立てたことすら忘れる」という人も珍しくありません。

どうすれば・・・・・・自分にとっての理想の生活を実現するために毎日頑張る」という習慣を定着させる・・・・・という「当たり前にできそう」だけど「ほとんどの人ができていない」ことができるようになるのでしょうか?

一生養ってほしい

妻に「離婚はしたくないが、同居もしたくない」という理由で婚姻費用を請求されている男性がいます。

この女性の「離婚はしない。同居もしない。婚姻費用は支払ってほしい。」という意見に、賛成する人もいれば反対する人もいるでしょう。

賛成する人はおそらく「永遠の愛を誓ったのだから、男は女性の一生に責任をもつべき。」という考えを前提にしているでしょうし、反対する人はおそらく「特別な事情がない限り、結婚しているなら同居するべき。」という考えを前提にしているでしょう。

ようするに行動の裏にある「思考」によって、その「行動」が決まっているのです。ですから離婚理由によく挙げられる「性格の不一致」は「思考の不一致」ともいえるのです。

なぜ?このような話を紹介したのかというと、あなたが「行動」を変えたければ「思考」を変える必要があるということを伝えたかったからです。しかしこの「思考」というものが案外、、、、曲者なのです。

思考は繊細

元テレビ朝日アナの竹内由恵は、夫婦の価値観の違いについて、こんなことをいっています。

夜シャン派?朝シャン派?

主人は必ず寝る前にシャワーをあびてキレイにしてからベッドに入ってほしいっていうタイプなんですけど、私はこれまでは朝シャン派で、シャワーをあびてシャンプーをして、キレイな状態で外に出るのが習慣だったんです。

【出典:メレンゲの気持ち(2020年4月18日)】

竹内由恵さんも旦那さんも「カラダを清潔にするべき」という思考をもっているものの、竹内由恵さんが「(カラダを清潔にするべき)だから朝にカラダを洗う」という思考をもっている一方で旦那さんは「(カラダを清潔にするべき)だから夜にカラダを洗う」と意見が分かれているわけです。

つまりほんの少しの価値観の違いが、大きな行動の違いになるということは本当にあるのです。

他にも例えば「口内はキレイにするべき」という思考をもっているものの、ある人は「(口内はキレイにするべき)だから食事前に歯を磨くべき」という思考をもっている一方で、別の人は「(口内はキレイにするべき)だから食事の後に歯を磨くべき」と意見が分かれてしまうことがあります。

そう。他人と同じような価値観を共有しているつもりでも、あくまでも「同じような価値観(思考)」であり「同じ価値観(思考)」である保証は一切ないのです。

おそらくあなたはこれまでの人生の中で「価値観(思考)」をそこまで強く意識することはなかったでしょうが、行動習慣を変えたければ普段意識することのない思考について考える必要があるのです。

習慣の裏にある思考

「習慣」は英語に訳すと「ハビット」(Habit)ですが、ハビットの裏にある考え方のことを「アティチュード」(Attitude)といいます。

例えば「毎朝歯を磨く」というハビットの裏には「口内環境を整えることはいいことだ」というアティチュードがあるでしょうし、「毎日会社に行く」というハビットの裏には「働かざる者食うべからず」とか「社会人になれば働くのは当然」というアティチュードが隠れているはずです。

もちろんすべてのアティチュードがハビットと結びついているわけではありません。

例えば「黒人差別の歴史」について解説したことを思い出してください。

アメリカには以前からKKK(クー・クラックス・クラン)という白人至上主義者たちがおり、「黒人のことが嫌いだ」というアティチュードをもっていました。とはいえKKKという組織はあくまでも「秘密結社」であり、堂々と公衆の面前で活動することはありませんでした。

また「黒人のことが嫌いだ」というアティチュードをもっている白人がいたことは確かですが、そのようなアティチュードをもっている白人全員が、日常生活のなかで「黒人がきたら逃げる」とか「黒人に嫌がらせををする」などの差別的な活動をしていたわけではありません。

しかしその流れを変えた権力者が誕生しました。そう。ドナルド・トランプ大統領です。

ドナルド・トランプ大統領はアメリカではタブーのはずの人種差別的な発言を悪びれることもなく繰り返し、白人の心の中に眠っていた「黒人のことが嫌いだ」というアティチュードを自身への投票に結びつけたのです。

ドナルド・トランプ大統領の誕生が明らかにしたことは、「アティチュードと結びついたハビットは強力になる」ということです。なぜならばアティチュードとハビットが一旦結びつくと「ハビットが正義」になりやすいからです。

例えば「白人警官が黒人を取り押さえようとしてそのまま殺してしまう。」という痛ましい事件があちこちで発生しても、黒人を殺す行為は「黒人のことが嫌いだ」というアティチュードによって正当化され、「黒人が抵抗して白人警官に危害を与えようとしたのだからしょうがない」という言い訳が、仮に嘘であっても受け入れられてしまうのです。

あなたには、自分が好意をもっている人に対してはその発言を好意的にとらえてしまうという経験はないでしょうか?

例えば「離婚しようかどうしようか」と悩んだ末に親しい人に相談した結果、「離婚するべきじゃない」と反対されることがあります。そういう時、ほとんどの場合「この人は自分のためにアドバイスしてくれるから信用できる」と無意識に考えてしまいがちです。

なぜならば「自分と親しい人なのだから、自分のためにアドバイスしてくれるはず。」というアティチュードが、そのアドバイスを肯定的な印象にしてしまうからです。しかし必ずしもそうとは限りません。

例えば元グラドルの高橋ゆづきさんは、離婚に関する親友からのアドバイスを「自分のためにアドバイスしてくれている」と信じていたものの、そうでなかったことを知り、大きなショックを受けたそうです。

アティチュード ⇔ ハビット

アティチュード(思考)がハビット(行動習慣)に影響するという話をしてきました。しかし興味深いことにその逆もあるのです。つまりハビット(行動習慣)がアティチュード(思考)に影響を与えることもあります。

有名な心理学の実験に、アメリカのスタンフォード大学で行われた「監獄実験」があります。ロールプレイングで被験者を刑務所の看守と囚人のそれぞれの役にグループ分けし、その関係を続けさせたところ、単なる役ではなく、本当に「自分が看守だ」、「自分は囚人だ」というアティチュード(思考)が芽生えたのです。

結果として、実験に参加しただけの被験者のなかに本物の従属関係が生まれてしまい、実験は中止に追い込まれました。ちなみにこの実験は映画にもなっていますので興味があれば鑑賞してください。

プリズン・エクスペリメント

ビジネスの世界でも「ポスト(地位・立場・役割)が人を作る」ということがよくいわれますが、そのポスト(地位・立場・役割)を演じているうちに、立ち振る舞いや顔つきや考え方がそれらしくなるということは本当にあるのです。

つまりここで確認したいことは、アティチュードとハビットは相互に関係しているということであり、アティチュード(思考)がハビット(行動)に影響を与え、ハビット(行動)がアティチュード(思考)に影響を与えるということが相互に繰り返されるうちに、思考や行動習慣を含めた人格は強固になっていくということです。

ですからもしあなたが自分にとっての理想の生活を実現するために毎日頑張る」という習慣を定着させたいと本気で願っているのであれば、思考を変えて行動を変えるという方法もあるし、行動から思考を変えていくという方法もあります。あなたはどちらの方法を採用しますか?

日本人の特性

もしあなたが日本人であれば、「行動から変える」という方法のほうが簡単に感じるかもしれません。なぜならば日本人には「思考」を意識する文化的な習慣がほとんどないからです。

例えばキリスト教やイスラム教徒であれば、新約聖書やコーランにかかれていることがそのまま「思考」として機能し、行動の指針となることも珍しくありません。

しかし日本には宗教はありませんので倫理もありません。作家の三島由紀夫は「日本人は空っぽ」と表現しましたが、本当にそのとおりです。日本人である以上、あなたもそのことは自覚しておいたほうがいいでしょう。

例えば江戸時代まで神武天皇の祖先が神という考え方はあっても、天皇そのものは神ではありませんでした。しかし明治時代になって天皇が本当に神になってしまい、御真影(ごしんえい:天皇・皇后のお写真)を直視するすら許されなくなりました。

佐藤健さんの主演で2015年に放送されたドラマ「天皇の料理番」では、昭和天皇を目の前にした佐藤健さんが、地面を見たまま昭和天皇と会話するシーンが描かれています。

しかし第二次世界大戦敗戦後、「神様」だったはずの天皇は「人間」になり、日本人は「鬼畜米兵」と呼んでいた敵軍のアメリカ兵に「ギブ・ミー・チョコレート」とすり寄るようになります。なんという変わり身の早さでしょうか???

遠藤周作の小説「沈黙」において、ポルトガルから日本にきた宣教師は「日本は沼」と表現しました。日本にキリスト教を根付かせたくても、宗教を根付かせるための土台である日本人の精神性は「沼」のようであるため、日本には本当のキリスト教が根付かないというのです。

ちなみに遠藤周作の小説「沈黙」は、マーティン・スコセッシ監督で映画化もされています。控えめにいっても名作だと思いますので、興味がなくても鑑賞することをおススメします。

沈黙-サイレンス-

ポルトガルから日本にきた宣教師が表現した「日本は沼」という状況は、現代日本でも続いています。日本人はキリスト教でもないのにクリスマスを祝い、バレンタインデーでチョコレートを交換し、ハロウィーンで仮装を楽しんでいるではありませんか。

そう。日本人は空っぽなのです。評論家の山本七平はそんな日本を「空気の支配する国」と表現しましたが、不倫問題・コロナ禍・賭博問題・憲法問題のすべてを空気が支配しています。

「不倫は悪」という旗印のもと、社会的に抹殺されてテレビから姿を消す人もいますが、不倫問題なんてなかったかのようにテレビに出演し続けている人もいます。(不倫が許される人と許されない人の基準はどこにあるの?

コロナ禍で東京都は「東京アラート」を発動する7つの指標を発表しましたが、東京アラートを発動するも解除するのも「総合的な判断」にゆだねられていました。(7つの指標に意味はないってこと?総合的な判断って何?

タレントの蛭子能収(えびすよしかず)さんは人気絶頂の1998年に単純賭博罪で逮捕されましたが、黒川弘務検事長は賭博の自ら認めたにも関わらず、逮捕されるどころか退職金まで受け取りました。(賭博で逮捕される人と逮捕されない人の基準はどこにあるの?

憲法は国家権力を縛るための『国民の覚書』であり、「その時代の雰囲気」というものに応じて勝手に変えてはいけないものです。それにも関わらず、安倍政権は憲法を1文字も変えることなく、憲法解釈を変え続けています。それにもかかわらず国民のほとんどはそのことを問題にしません。(その時代の内閣の判断で解釈がコロコロ変わる憲法ってなんなの?

あなたは変われる

「日本人は空っぽ」、「日本は沼」、「空気の支配する国」という言葉は、文学、宗教学、社会学の分野において日本を批判する文脈で語られてきました。

しかし裏を返せば、日本人はその他先進国のどの国民よりも「その時代に正しいと信じられていることは、絶対的に正しいわけじゃない」ということを知っているわけです。

あなたのアティチュード(思考)も絶対的なものではありません。あなたのハビット(行動習慣)も絶対的なものではありません。

あなたの信じる「正しさ」というものは、あなたが生まれた時代、あなたの生まれた環境、あなたが受けた学校教育により生まれた一つの「解釈」でしかありません。

例えば今でも日本の学校では先生が「前へならえ!」と号令をかければ、生徒はそれにならわなければなりませんし、「進め」と言えば進み、「止まれ」と言えば止まるということをやっています。

「前へならえ!」ということを繰り返すうちに、自分の頭で考えることなく行動するようになり、言われたことに疑問をもつことなく従うというハビット(行動習慣)が定着するようになります。そうして先生の言うことを素直に聞くことが「いい子」というアティチュード(思考)が植えつけられるのです。

「自分が自分であると信じている自分は、過去に出会ったあらゆるものの結果でしかない」ということを心の底から受け入れることが、「自分を作り出す」(≒自己陶冶)上での第一歩になる・・・ということは是非とも頭の片隅に置いておきましょう!

では「自分を作り出す」ためにはどうすればいいのでしょうか?

常識を破壊する

残念ながらわたしたちは、自分のもっている知識の中で想像できる範囲のなかでしか、何か物事を考えることができません。ですから「自分を作り出したい」のであれば、自分の知識を増やすしかありません。しかし知識をひたすら増やせばいいわけではありません。

今まで自分が知っている知識をいくら増やしても、自分の行動は変わりません。なぜならば既存の知識ではアティチュード(思考)が更新されないからです。ですから「自分を作り出す」場合には、「今まで自分が知らなかった知識」を積極的に増やしていく必要があります。

具体的には「今まで●●が常識だと思っていたけど、△△であることに気づいた」という驚きの体験を1回でも多く体験することが鍵になります。ひらたくいえば【1個でも多くの常識を破壊すること】があなたが生まれ変わる秘訣になります。

1冊の本との出会いが常識を破壊してくれることもあるし、知らない土地でたまたま見かけた光景が新しい発想をもたらしてくれることもあるでしょう。常識を破壊する方法は一つではないのです。

もちろん人間は神ではありませんので世の中のすべての情報をインプットすることもできませんし理解することもできません。しかし「他人が知らないことを知っている」ということは、成功する上でも幸せになる上でも有利に働きます。

1975年にはじまったクイズ番組「パネルクイズ アタック25」(谷原章介さんが番組MCを勤めています)をご存知ですか?この番組は、参加者同士のクイズ対決によりパネルを奪い合う番組です。

この番組では4人いる参加者同士のクイズ対決に勝利した優勝者のみが、番組の最後でクルーズ旅行をかけた最終問題に挑戦するのですが、たくさんのパネルを獲得するほど最終問題の正答率が高くなります。なぜならば獲得したパネルが多いほど、最終問題のVTR動画がよく見えるからです。

【25枚中15枚獲得した場合】

その一方で(以下の画像のように↓↓↓↓)獲得したパネルが少なければ、回答者は問題自体をよく理解することができませんので、当然ながら正答率は低くなってしまいます。

【25枚中7枚獲得した場合】

今まで自分が知らなかった知識」を増やし続けましょう。そうすればパネルアタック25で、たくさんのパネルを獲得することに成功した回答者のように、人生で直面する問題にも高い正答率をキープすることができるでしょう。

さて・・・・このあたりで終わりにしてもいいと思ったのですが、日本人はマジメな人が多く「勉強ばかりしていて挑戦しない人」も多いという指摘もありますので、最後にもう一言付け加えておきたいと思います。

決断主義

世界的な経営コンサルタントとして有名な大前研一先生は、アメリカ人女性と国際結婚しています。

ご自身の番組で「国際結婚を成功させるために必要なことは?」と質問された大前研一先生は、「そこに骨を埋める覚悟」が必要であると回答しています。

なぜならば「そこに骨を埋める覚悟」がない場合、他の選択肢が魅力的に思えてくるし(隣の芝生は青く見える)、その結果としてどうしても現在やっていることが中途半端になり、そこにいること自体が落ち着かなくなってしまうからです。

【大前研一からの助言】

ようするに結婚生活の場合、「他にたくさんの可能性があり、この人よりもっと自分に合う相手がいるかもしれないことはわかっているけれど、自分は『この人しかいない』と思うことに決めたんだ!」と思うことが、「そこに骨を埋める覚悟」というものであり、わたしはそのことを「決断主義」といっています。

決断主義は、結婚生活だけでなくあらゆる分野に当てはまります。あなたが骨を埋めてもいいと思えるような「あなたが本当に欲しいもの」はなんでしょうか?

勘のいい方であれば、ここで話が『願望』(本当に欲しいものは何か?)に循環していることに気づいたかもしれませんが、そのこと自体は不思議なことではありません。

なぜならば「願望」、「感情」、「知識」、「言語」、「行動」、「完全性」(思考と行動は相互に関係している)、「確信」(決断主義)は、それぞれが相互に関係しあっているからです。

「変わるリスト」を眺めながら【自分に足りないものがあるとすればそれは何か?】ということを常に自問自答することが大切です。あなたが「変わる」ことを願っています。

【変わるチェックリスト】

『願望』(心の底から実現したいことは?)
『感情』(乗り越えるべき感情的な葛藤は?)
『知識』(自分が知るべきことはなにか?)
『言語』(自分も他人も納得させられるか?)
『行動』(今すぐやるべきことは何か?)
『完全性』(思考と行動は一致しているか?)
『継続』(骨を埋める覚悟があるか?)

Profile

坂本輝(さかもと あきら)
「大企業の問題」を解決することに興味を失い外資系戦略コンサルタントを卒業。「個人の問題」を解決するために、借金地獄、離婚危機、適応障害、脱サラなどを乗り越えた経験から学んだことを伝えるべく、現在はライフコーチとして活動中。「生きるためのヒント」を、哲学・宗教・経済・社会学・サブカルチャー(小説・漫画・映画)など様々な角度から発信しています!!