夫婦が離婚する理由で一番多いのは「性格の不一致」です。
結婚する前は「性格なんて結婚する前からわかっている。だから性格の不一致で離婚なんてするわけがない」と自信満々の夫婦でも、結婚生活が長くなると「性格の不一致」が徐々に表面化することも珍しくありません。
その一方で、性格の不一致という離婚理由は世間的を保つための方便であることも多いです。(離婚の理由が他にあったとしても、離婚理由を正直に公表する必要などないのですから。)
とはいえ「性格の不一致以外で理由する理由がない」とお悩みの人もいると思います。そこで今回は性格の不一致を主たる原因として離婚を認めた過去の裁判事例などを紹介していきたいと思います。
性格の不一致による離婚は難しいのか?(1)
巷では「性格の不一致による離婚は難しい」と主張されることが多いので、まずは本当に性格の不一致による離婚は難しいのか考えていきます。
民法では離婚を認める理由(以下、離婚事由)を以下の5つと規定しています。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない重度の精神病
- 婚姻を継続しがたい重大な理由
以上の5つのうち、性格の不一致がそのまま当てはまる項目はありません。そのため性格の不一致で離婚を求める場合は、「5 婚姻を継続しがたい重大な理由」を主張する必要があります。
そこで誰もが「そもそも婚姻を継続しがたい重大な理由とはなんだ?」と疑問に思うのですが、民法では「婚姻を継続しがたい重大な理由は、○○のようなケースが当てはまります」と明確に規定されているわけではありません。つまり裁判官が婚姻を継続しがたいと認めれば、離婚が認められますし、そうでなければ認められないということです。
なお裁判官に「婚姻を継続しがたい重大な理由」に認められることが多いのは「DV」、「長期間の別居」などです。ここまでの説明では、性格の不一致で離婚することは絶望的なように思います。
でも少し待って下さい。冷静になって考えれば、離婚事由を元に離婚を主張することの方が少ないのです。その証拠に離婚する夫婦全体のうち90%が話し合いで離婚しています。
その一方で離婚調停・離婚裁判で争うのは、全体の10%程度ですうから、乱暴にいってしまえば夫婦間で離婚に合意すれば、離婚する理由などなんでもよいのです。
当たり前の話なのですが、ここの部分は意外と見過ごされがちです。つまり離婚するために大事なことは相手を説得する離婚戦略であり説得術なのです。
さて離婚するためには、相手を説得することが重要と説明しましたが、過去の裁判事例では夫婦関係破たんの主な原因を性格の不一致とした判決もあります。ここから先は、性格の不一致で離婚が争われた事例を紹介していきます。
性格の不一致で離婚が争われた事例(2)
性格の不一致で離婚が争われた事例を順に紹介していきます。
- 病弱な妻が会社人間の夫に離婚を求めた事例
- 夫が性格的欠陥がある妻に離婚を求めた事例
- インテリ夫がヒステリー妻に離婚を求めた事例
- 明るい性格の妻が無口の夫に離婚を求めた事例
- 開業医の夫が別居中の妻に離婚を求めた事例
病弱な妻が会社人間の夫に離婚を求めた事例(2-1)
病弱な妻が、会社人間の夫に離婚を求めた事例について紹介します。
この事例では第一審では妻の離婚申し立てが認められましたが、控訴審では棄却されています。しかし最終的にはこの夫婦は離婚することになりました。
裁判所の判断に関わらず、離婚したい意思を最後まで貫いた妻の事例ですので興味があれば参考にしてください。まずは基本情報を載せておきます。
裁判の流れ |
|
---|---|
夫婦の歴史 |
|
ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。なお法律的な内容をわかりやすくするため、意訳していますがご了承ください。
- 原告(妻)の主張は?
- 第一審の判決は??
- 控訴審での判決は?
- 結局どうなった?
原告(妻)の主張は?(2-1-1)
夫は早朝6時台に出勤し、帰宅は9時半頃であり、11時以降に帰宅することも多かったようです。さらに、平日帰宅して休日も仕事にかかわる勉強をしており休日になれば趣味であるクラシック音楽や読書を一人で楽しんでいました。
そのような会社人間の夫に対して、妻は長年尽くしてきました。
- 朝食は夫のベットまで運ぶ
- 歯ブラシを用意
- 背広や靴下をはかせる
- 帰宅時には必ず家で迎える
- 風呂や夕食の準備は必須
しかし夫の定年退職後に妻の堪忍袋の緒が切れてしまい、妻は夫のあまりの思いやりの無さに耐えられないこと等を理由として離婚請求を求めました。
第一審の判決は?(認容○)(2-1-2)
第一審の判決では、妻の訴えを認めました。【横浜地相模原支判平成11年7月30日】
その理由は今後夫婦関係が修復する見込みはなく、婚姻を継続し難い事情があるというほかないというものでした。さらに以下を命じました。
- 慰謝料200万円
- 夫の持分の建物の全て(財産分与)
- 1,600万円(財産分与)
- 一ヶ月16万円の支払い(扶養的財産分与)
しかし夫はこれに納得せずに、控訴しました。
控訴審での判決は?(棄却×)(2-1-3)
控訴審では、妻からの離婚請求を棄却する判決が下りました。「婚姻関係が完全に破綻してるとはいえない」という判決でした。
その判決に至った理由を箇条書きにします。
- 妻が別居を開始した原因は長女と夫の確執にある
- 妻は病気がちで手術を繰り返している
- 妻の離婚後の生活は不安定と想定される
- 離婚成立後も長女と妻が一緒に生活するには限界がある
- 長男は両親の婚姻関係継続を強く望んでいる
つまりもともと別居の原因は、夫婦の不仲ではなく長女と夫の確執であると裁判所は指摘したのです。
さらに妻は卵巣腫瘍の手術、椎間板ヘルニアの治療、胃がんの手術、C型肝炎、変形性股関節症などの手術を経て、家事も十分にできる状態ではないことも指摘されています。妻の年齢や、健康面を考えると、婚姻関係を解消して生きていけるには疑問が残ると裁判所は判断したのです。
結局どうなった?(2-1-4)
控訴審では、妻の離婚したいという主張は退けられる結果となりました。しかし妻の離婚したいという思いは、その後も強くなる一方だったようです。
その後、妻は再度の調停が申し立て、結局は高裁で離婚判決を勝ち取ることに成功しました。
この結果からわかるのは、どちらかの離婚する意思が強ければ、裁判所の判断がどうであれ、最終的には離婚が認められる可能性があるということです。
裁判所の「離婚を認めない」という判決が下ったからといって、夫婦円満の日々が戻るわけではないのです。
夫が性格的欠陥がある妻に離婚を求めた事例(2-2)
夫が『性格的欠陥がある妻』に離婚を申し立てた事例を紹介します。この事例では第一審は夫による離婚申し立てが棄却されましたが、控訴審では認められています。
離婚したい!という夫の悲願が叶ったように思いましたが、その後上告審では棄却されています。裁判所が夫婦の離婚問題を判断する難しさを改めて感じさせる事例ですので興味があれば参考にしてください。
裁判の流れ |
|
---|---|
夫婦の歴史 |
|
ここからは、以下の観点で裁判の中身をみていきます。なお法律的な内容をわかりやすくするため、意訳していますがご了承ください。
- 原告(夫)の主張は?
- 第一審の判決は??
- 控訴審での判決は?
- 上告審での判決は?
原告(夫)の主張は?(2-2-1)
夫は妻の性格に重大な欠陥があることを主張して離婚を求めました。夫の主張を整理すると、以下のようなものでした。
- 妻がわがままで気まぐれ、自分の意見を曲げない性格
- 家事処理能力が著しく低い
- 義母に反抗的な態度であり、義母と妻には確執がある
第一審の判決は?(棄却×)(2-2-2)
夫の申し立ては棄却されます。その理由は、以下のような事情があったからです。
- 妻は夫不在の家を貧乏に耐えながら守っている
- 夫は子供の生活費の仕送りを続けている
- 夫婦は別居しているが徒歩10分圏内で暮らしている
- 子供が夫の家に訪ねることもある
そのため約6年の別居生活にも関わらず、夫婦の婚姻関係が破綻しているとはいえない裁判所に判断されてしまったのです。
控訴審での判決は?(認容○)(2-2-3)
夫は第一審で棄却されたことに納得がいきません。そのため控訴したところ悲願であった離婚を認める判決を勝ち取ります。
控訴審では、以下のようなポイントが夫に有利に働きました。
- 夫が妻と婚姻生活を継続する意思は全くない
- 双方の性格の不一致と愛情喪失は深刻かつ治癒し難い
- 共同生活をして夫婦関係を回復するのは絶望的
つまり「夫婦関係が壊れた原因は夫にもあったけれども、結果的には既に破綻した夫婦関係を修復するのは困難である。だから離婚は認めてあげましょう。」というのが裁判所の結論だったわけです。
おそらくこの時点で夫は、再び離婚が認められない状況に追い込まれるとは思ってもみなかったでしょう。
上告審での判決は?(棄却×)(2-2-4)
上告審での判決は、夫の希望を打ち砕くものでした。なんと上告審で破棄差し戻しになり、今までの議論を根底から覆されたからです。
上告審がこれまでの審理内容を破棄差し戻した理由は、以下のようなものでした。
- 夫にも婚姻関係破綻の責任があったのでは?
つまりこれまでは訴えられた側の妻の性格的欠陥に注目が集まっていましたが、夫にも疑いが掛けられたのです。「夫婦関係破綻の原因は夫にもあった可能性を十分に審議していない」と上告審では判断されたのです。
インテリ夫がヒステリー妻に離婚を求めた事例(2-3)
インテリ夫がヒステリー妻に離婚を求めた事例を紹介します。
これから紹介する裁判では、インテリな夫の趣味(クラシック音楽の鑑賞等)に妻が付き合わなかったことに対して「夫婦の相互協力義務」を怠ったとの判断が下されています。
ひらたくいえば「夫の高尚な趣味に、妻も付き合う努力をしないとダメでしょ?夫は知的水準の高い生活を望んでいるのだから。」とも解釈できる判断になっています。
夫の趣味を高潔とする一方で、妻の趣味を低級と判断する点は納得いかない人も多いでしょうし、「むしろ、夫が妻側に歩み寄らなければならなかったのではないか?」という反論も可能だと思いますが、離婚裁判は裁判官の価値観が大きく影響することは見過ごせない事実でもあります。
これから紹介する事例では、性格の不一致を発端とした夫婦関係破綻で離婚が認められた経緯を詳しく紹介します。なお法律的な内容をわかりやすくするため、意訳していますがご了承ください。
裁判の流れ |
|
---|---|
夫婦の歴史 |
|
- 原告(夫)の主張は?
- 第一審の判決は??
- 控訴審での判決は?
原告(夫)の主張は?(2-3-1)
夫は妻に対して以下のような不満をもっていました。
- 家事に専念するばかり
- 古典音楽の鑑賞や読書に興味を示さない
- 口論をするとヒステリー発作を起こす
夫の仕事は極めて多忙で、妻と夕食を共にすることは月に1回くらいしかありませんでした。趣味も合わない、会話もしない、会話をすればヒステリーを起こすという状況です。
夫は「妻と一緒に暮らすことはもうできない」と感じ、離婚調停を申立てたものの不調(主張が認められないこと)に終わります。そこで夫は二度と日本には戻らない決意をもって、単身西ドイツに出国します。
その後3年後に日本に帰国し、帰国した3年後に2回目の離婚調停を申し立てます。2回目の離婚調停でも、離婚の主張が認められなかったため、話し合いを諦め離婚裁判をすることを決めました。
第一審の判決は??(2-3-2)
第一審の判決では、夫の主張は棄却され、離婚は認めませんでした。妻が主張した「夫は有責配偶者である」という主張を裁判所が支持したのです。
つまり離婚を主張する夫の言い分はすべて「わがまま」であるとされたのです。そして婚姻関係を破綻させたのは夫であり、婚姻関係を破たんさせた側からの言い分を裁判所は支持できないということです。
一般的に夫婦関係を破綻させた側からの申立ては、離婚裁判において非常に不利になります。
なぜならば仮にこれを認めてしまえば、「不倫をしたけど離婚してくれ」、「DVをしたけど離婚してくれ」という加害者側からの主張が裁判所で議論されるという理不尽な状況が発生してしまうからです。
夫婦関係破たんの原因が、自分のわがままと認定された夫は深く失望したと思います。しか、その一方で、夫は別の女性と暮らし始めます。
ちなみに婚姻関係中であっても既に別居している場合には、配偶者以外の異性と一緒に生活を営んでも「不貞行為」と認定されることはほとんどありません。(世間でいうところの『浮気・不倫』とは感覚が異なります。)
夫の立場からすれば、新しく同居した女性との今後を考えれば、なんとしてでも妻との離婚を成立させなければいけませんので、離婚を諦めることができず控訴するのでした。
控訴審での判決は?(2-3-3)
控訴審では一審判決の判断とは異なり、離婚請求を認められる判決が下ります。この判決が下された裏には、以下のようなポイントがありました。
- 夫婦関係は完全に破たんしている
- 婚姻関係の回復を期待するのは困難
- 夫婦関係破たんの原因が一方的に夫にあるとはいえない
実際の裁判では、以下のようなコメントがありました。
認定の事実を総合すると破綻原因の最大のものは夫と妻の生活感、人生観念上の隔絶(いわゆる性格の不一致)であったとしかいうよりほかはなく、両者の生活観、人生観はそれぞれの本人にとっては価値あるものであるから、右のような隔絶の存在をもって妻はもちろん、夫を非難することはできない。
【東京高判昭和54年6月21日東高民時報30巻6号152頁・判時937号39頁・判夕395号63頁】
さらに、以下のような発言もありました。
知的水準の高い生活を望む男性を夫にもった妻は(このような夫の希望自体はもちろん不当なものではないから)自己の知性を高めるためできるだけの努力をなすのが夫婦の相互協力義務に合致するところである
【東京高判昭和54年6月21日】
つまり夫には夫に合わせて知性を高める努力をする義務がある旨述べています。
なお今回の裁判所の主張のように、「既に婚姻関係が破たんしている夫婦に対して無理に離婚を認めないことは酷であり、夫婦のためにはならない」という主張を「破綻主義」といいます。
明るい性格の妻が無口な夫に離婚を求めた事例(2-4)
お互いに特段の非があるわけでもないのに、離婚の主張が認められた事例を紹介します。なお法律的な内容をわかりやすくするため、意訳していますがご了承ください。
裁判の流れ |
|
---|---|
夫婦の歴史 |
|
- 原告(夫)の主張は?
- 第一審の判決は??
原告(妻)の主張は?(2-4-1)
妻は夫に対して不満がありました。夫は無口で感情を表に表さない性格だったのです。
妻は会社を辞めて専業主婦になったものの、明るい性格の自分に比べて、無口で感情を表に出さない夫に気づまりを感じていたのです。
妻はそのことを熱心に夫に訴えるも、夫は「結婚すればお互いを尊重しなければいけない」の一点張りです。夫は自分の信条を押しつけるばかりで、あくまでもマイペースの生活習慣を修正しようとはしませんでした。
妻の不満は蓄積されるばかりで、その3ヶ月後には夜の生活も拒否するようになります。そして話をすれば口論になるのでお互いに口もきかない状態になり、夫婦仲はますます冷え込むようになりました。
結局のところ婚姻後11か月で別居を開始し、離婚調停・6年間の別居を経て離婚裁判を申し立てるのでした。
第一審の判決は??(2-4-2)
第一審では、7年数か月の婚姻関係中の6年間が別居で占められることや、妻の離婚の意思が揺るがないことを理由に、婚姻関係の破たんを認めました。さらに夫婦関係破たんの重要な原因を性格の不一致である旨認定しました。
男性目線でこの裁判を見ている方は、わがまま且つ自己中心的にみえる妻を支持する判決に不満をもつ人がいるかもしれません。なかには、気ままに別居を開始した妻に離婚原因があると考える人もいるのではないでしょうか。
しかし裁判では妻の勝ち気で自己中心的な性格は否定できないとしつつも、夫の無口で感情を表に出さない生活態度も、夫婦関係破たんの重要な要因として考慮すべきとしています。
開業医の夫が別居中の妻に離婚を求めた事例(2-5)
開業医の夫が、妻が配偶者として納得できないことを理由に、離婚を申し立てた事例を紹介します。
これまでは別居期間が長くなり、夫婦関係が破たんしていることを理由に離婚を認めた事例を紹介しました。
しかしこれから紹介する事例は、別居期間が長くなったものの夫婦関係の破たんを認めませんでした。その点が他の裁判事例では異なる点です。
つまり同じような事実であっても、それが「夫婦関係破たん」かは、裁判官によって判断が異なることを示唆しています。
裁判の流れ |
|
---|---|
夫婦の歴史 |
|
- 原告(夫)の主張は?
- 第一審の判決は??
なお法律的な内容をわかりやすくするため、意訳していますがご了承ください。
原告(夫)の主張は?(2-5-1)
夫は以下のような理由で離婚を申し立てました。
- 妻の性格、態度が夫婦の関係が悪化した原因
- 医院の営業が妻により阻害された
- 自ら命を絶つ行動に出たことで失望した
しかしこれらの夫の主張に対して裁判所の見解は、夫の満足いくものではありませんでした。
第一審の判決は??(2-5-2)
裁判所は、夫の主張した事実自体は認定しています。しかしそれらの事実認定をした上で、婚姻関係の破綻が一方的に妻にあるとの主張は認めませんでした。
夫婦仲が冷え込んだ理由は、夫婦がお互いに相手を理解し合い、長所・短所を認め合う気持ちを欠いていたことにあると判断したのです。
そして夫婦の性格の違いは、努力により克服できるとも言及しています。その根拠となっているのは、夫、妻ともに極端に偏った性格の持ち主ではないと判断されたことが大きいです。
裁判所は、夫を開業して成功した評判の良い医師と判断し、また妻の看護師としての実績を認めたのです。実施に妻は、看護師として夫に尽くしつつも病気持ちの舅の介護をし、手のかかる4人の子供を育て上げています。
そのため裁判所は「夫婦間の出来事はいかなる夫婦でもありがちな事柄であり、相手の人格を根底から踏みにじるような出来事ではない」と判断したのでした。
以上のような理由により、夫の離婚したいという主張が認められることはありませんでしたが、しかしながら別居7年間も経過した夫婦が、裁判所の期待通り復縁したのかは記録にないのでわかっていません。
性格の不一致で離婚する方法(3)
さてこれまで性格の不一致が関係した離婚裁判について紹介してきました。これらの事例でわかることは、以下の2点です。
- 性格の不一致自体では離婚は認められない
- 裁判所により判断が別れることがある
つまり裁判で離婚が認められた事例では、「夫婦関係が破たんしていること」が直接の離婚原因として認められていません。
あくまで夫婦関係破たんの大きな原因の一つが、「性格の不一致」であると結論付けられているのであり、離婚を認めるかいなかの判断は裁判所によって分かれるのです。
具合的には「夫婦関係が破たんしているか」、「どちらに非がありそうか」、「努力すれば夫婦円満に戻れるか」という点については、裁判官により判断が分かれるようです。
以上2点のポイントを踏まえた上で、離婚したいあなたに向けて離婚に向けた提案をしていきます。提案したいことは以下の3点です。それでは順に説明していきます。
- 配偶者の落ち度を証明する
- 強い意思を固める
- とにかく説得する
配偶者の落ち度を証明する(3-1)
この記事を読んだ方は、配偶者が頑なに離婚を拒否して離婚裁判に突入した場合、性格の不一致単体を理由にして離婚することは難しいと理解して頂いていると思います。
一方的に離婚を成立させる場合、大前提として「夫婦関係の破綻」が離婚には絶対に必要です。そこで考えてほしいのは、夫婦関係破たんの原因は性格の不一致だけではないということです。
つまり配偶者の浮気、配偶からの暴力、配偶者からの暴言など、良好な夫婦関係を破壊する原因となりそうなものは全て証拠に残しておいて下さい。
そしてもしも配偶者の不倫や暴力を立証できれば、圧倒的に有利な条件で離婚協議をスタートできます。
人間は社会的な生き物ですから、不倫した事実、配偶者に暴力を振るっている証拠が裁判で公表されるといわれれば動揺します。証拠さえ掴めば、対外的には協議離婚で「性格の不一致」により離婚したことになるでしょう。
強い意思を固める(3-2)
婚姻関係は、どちらかが歩み寄らなければ円満な生活を送ることは難しいです。
裏を返せばあなたが強く離婚する意思を固めれば、相手が離婚を拒否しようがどうしようもないということです。(本記事で紹介した裁判事例でも、最終的には離婚が認められているケースが多いです。)
それらの事例の共通点は、「絶対に離婚する」という意思が固かったことです。ですから、あなたは離婚を拒否する相手に「これ以上離婚を拒否しても復縁することはない」と強く印象づけなければなりません。
つまり「離婚裁判になってもお金も時間も無駄になるだけ」と思わせることができれば、離婚に一歩近づくことができるのです。
とにかく説得する(3-3)
よくよく考えれば、夫婦どちらかの離婚する意思が揺るがない場合には、裁判で争うのは合理的ではありません。
最終的に離婚するのに、時間もお金も裁判につぎ込むのは、賢いとは思えません。その事実は数字にも表れています。離婚する夫婦の9割は、協議離婚により離婚しています。
とはいえ「協議離婚で離婚する夫婦が多い」ということは、夫婦がお互いに『納得』することを意味しているわけではありません。
夫婦が離婚に向けた話し合いを進めるうちに、これ以上話しあっても合理的ではないとお互いに判断し、「納得」することを諦めて「手打ち」をするのです。
ですからあなたの配偶者が合理的な判断ができる人物であれば、話し合いを尽くせば納得してくれる可能性が高いです。
なお話し合いの時にまず考えておくべきことは「なぜ配偶者は離婚を拒否しているのか?」という点です。「お金」、「子供」などの問題であれば、あなた譲歩できる範囲で譲歩することも大事ですし、相手の気持ちが落ち着くまで、数か月間のクール期間もあっても良いと思います。
一方で話し合いを何度も重ねているのに、お互いの主張が平行線なのであれば「合理的な考え方では解決できない」と考えを改める必要があります。その場合には「情に訴える」、「戦う(離婚調停に進む)」の2つの選択肢があります。
- 情に訴える
- 戦う(離婚調停に進む)
情に訴える(3-3-1)
情に訴えるのは、政治家が良く使う手口です。選挙公約をまじめに考えて、有権者に理解してもらうよりも、印象に残る一言、感情に訴える一言がメディアに取り上げられる方が票があつまります。
話は脱線しますが、詐欺師も情に訴えかける手口を悪用します。例えば訪問販売で断る人に何度も何度も土下座してお願いするとか、オレオレ詐欺で子供を思う親の気持ちを悪用したり、刑事告訴すると脅して不安な気持ちにさせることで行動させます。
高級絵画の画商も、その絵の素晴らしさを語ることは一切しないそうです。ひたすら、その絵と一緒に暮らす生活に語るそうです。
平たく言えば「凄い人」、「センスがいい人」、「お金持ち」に見られることを耳元で囁くのです。
つまり人は論理的に説得されるより、感情を原動力に行動する生き物だということです。ですからもしも離婚については話し合う機会があれば、相手の感情を刺激するようないい方を考えて下さい。
例えばなんども口論しているのであれば「なんでこちらの主張がわかってくれないのか?」ではいけません。
- 離婚するまであと何回、口論したらお互いのことを嫌いになれるかな?
- 離婚すれば相手に酷いこと言わない生活に戻れるね
- 離婚すれば親子喧嘩は一生見せなくてすむ etc
どんな言葉が相手の心に響くかは未知数ですが、相手の感情に訴えかける意識を持つと良いでしょう。
戦う(離婚調停に進む)(3-3-2)
離婚調停での話し合いも不調になれば、裁判しか残されていません。裁判になれば、今まで紹介してきた「情」は全部捨ててください。
裁判は勝つか負けるかの戦いでしかないので、相手を思いやることはすべてマイナスになります。徹底的に論理的に相手を屈服させることだけを考えて、経験豊富な先生に弁護を依頼しましょう。
まとめ
性格の不一致で離婚したい場合には「話し合い」が主な作業になると思いますが、性格の不一致が激しい相手と話し合わなければいけないのは、苦痛でしかないでしょう。
しかしだからこそ我慢して最短で離婚できる道を探りましょう。なお本格的に離婚準備を進めたい方は是非とも本サイト「離婚準備なう。」をフル活用してください。