fbpx

離婚後の戸籍・姓の全パターンをわかり易く解説~子供の戸籍・姓にも対応!

離婚 戸籍

離婚に関連する戸籍・姓の複雑な手続きに混乱してしまう人が多いようですので、そのあたりを解説していきたいと思います。

戸籍・姓の基本

戸籍・姓の基本
  1. 戸籍とは?
  2. 結婚するまでの戸籍・姓
  3. 親権と戸籍の関係

戸籍とは?(1-1)

戸籍とは「出生から死亡に至るまでの親族的身分関係を登録・公証するもの」です。どこで生まれたのか?再婚歴はあるのか?などの情報が記載されています。

なお世界的には日本と中国ぐらいしか戸籍制度は存在しておらず、中国の場合は農民を農村部に縛り付けておくための制度なのですが、日本では戸籍がないと様々な手続きに困ることになります。

例えば戸籍に入らないと結婚もできないですし、パスポートも作れません。もちろん、社会福祉を受けることもできません。

未婚~婚姻時までの戸籍・姓(1-2)

これから先は『夫の田中』さんと『妻の鈴木さん』が結婚して離婚するまでの戸籍の状態について説明していきます。

  1. 離婚前の戸籍・姓
  2. 離婚時の戸籍・姓

未婚時の戸籍・姓(1-2-1)

まず夫婦が結婚する前は、夫婦それぞれが実家の両親と同じ戸籍に入っています。(下図 夫は#1、妻は#2)

離婚前 戸籍 姓

婚姻時の戸籍・姓(1-2-2)

そして結婚すると、新しい戸籍をつくり、夫婦一緒に入ります。(下図 #3)

結婚中 戸籍 姓

戸籍を新しく作る際には、戸籍の代表者となる「筆頭者」を選定する必要があります。日本では夫が筆頭者になることが多いため、結婚時の姓が夫の姓になること方が多いです。

今回のケースでは夫の姓である「田中」を新しい戸籍の姓とします。もちろん子供が生まれれば、その子供は夫婦と一緒の戸籍に入ることになります。

親権と戸籍の関係(1-3)

親権と戸籍の関係について説明しておきます。結論からいうと、親権と戸籍は連動しません。

親権と戸籍は独立した概念であり、別々に手続きする必要があります。そのため基本的には親権の決定と戸籍の決定は影響を受けません。

しかし離婚により戸籍を抜ける側(多くは妻)が、親権を持たない状態で子供と一緒に暮らす場合には注意が必要です。

具体的には親権のうち「監護権」のみを母親が受け持つことで、子供と一緒に暮らすことは可能ですが、監護権があれば何でもできるわけではありません。

例えば離婚後に子供の戸籍や姓の変更を求めても、子供が15歳になるまでは親権者である夫に手続きをお願いする必要があります。

離婚後の夫婦の戸籍・姓(2)

離婚後の夫、妻、子供の戸籍・姓のパターンについて詳しく説明していきます。

戸籍・姓のパターン
  1. 夫(筆頭者)の戸籍・姓
  2. 妻の戸籍・姓(子供ナシ)
  3. 妻の戸籍・姓(子供アリ)

夫(筆頭者)の戸籍・姓(2-1)

最初に、夫(筆頭者)の戸籍について考えます。(下図:赤字太枠点線

離婚 夫 戸籍

結論から言うと、夫(筆頭者)の戸籍は、離婚しても変わることはありません。結婚時に新しく作った戸籍に、離婚後もそのまま入り続けることになります。

妻の戸籍・姓(子供ナシ)(2-2)

一方で戸籍の筆頭者ではない妻には、3パターンの選択肢が用意されています。(下図:赤字太枠点線

離婚後 妻 戸籍 姓

妻_戸籍・姓のパターン
  1. 旧戸籍に戻る(原則)
  2. 新しい戸籍に入る
    (姓は婚姻時と同一:田中)
  3. 新しい戸籍に入る
    (姓は旧姓:鈴木)

旧戸籍に入る(2-2-1)

戸籍の筆頭者でないものが離婚すれば、原則として一つ前の戸籍に入りなおすことになります。これは民法767条1項の規定で決まっています。

つまり離婚届を提出しただけであれば、自動的に元の戸籍(結婚前の戸籍)に入るというわけです。

旧戸籍に入る(妻のパターン①)

旧姓と通称の使い分け

婚姻時の姓から、旧姓時の姓に戻した後は2つの選択肢があります。

  1. すべての名義を旧姓に戻す
  2. プライベートは旧姓、通称は結婚時の姓を名乗る

すべての名義を旧姓に戻すメリットは「心機一転できる」、「手続きを一度に済ませられる」が挙げられるでしょう。

逆にデメリットとしては、「周囲が慣れるのに時間がかかる」、「手続き直後は混乱する」が挙げられます。

一方でプライベートは旧姓、通称は結婚の姓を名乗る場合のメリットとしては、「離婚の事実を知られずに済む」、「手続きが少なくて済む」が挙げられます。

逆にデメリットとしては、「状況に応じて姓の使い分けが必要」、「名義変更をするべきものとすべきでないものの区別が面倒」が挙げられます。

新しい戸籍に入る(姓は婚姻時と同一:田中)(2-2-2)

筆頭者以外の方が、新しい戸籍を作ることも可能です。(下図:赤字太枠点線

新しい戸籍を作る(妻のパターン②、③)

新しい戸籍を婚姻時の姓(田中)で作る場合もあれば、(②)、旧姓(鈴木)で作る場合もあります(③)。ちなみに新しい戸籍をつくるケースは、以下のような状況に置かれた場合です。

新しい戸籍をつくるケース
  • 両親が亡くなって戻る戸籍がない(②or③)
  • 婚姻時の姓を名乗りたい(②)
  • 子供と一緒の戸籍に入りたい(②or③)
両親が亡くなって戻る戸籍がない

両親が亡くなって戻る戸籍がなければ、新しく戸籍を作るしかありません。

婚姻時の姓を名乗りたい

プライベートと仕事の状況を踏まえると、婚姻時の姓をそのまま名乗り続けたい場合もあると思います。

元夫の戸籍に入ることは出来ませんので、婚姻時の姓と同じ姓の戸籍を新しく作り、そこに入ることになります。

子供と一緒の戸籍に入りたい

子供と一緒の戸籍に入りたいならば、結婚前の戸籍に子供を移動させればいいのではないかと考える人もいるでしょう。

しかしそれは不可能です。なぜならば、戸籍は「1つの夫婦」と「子供」の組み合わせが基本単位であり、孫を入れることは想定されていません。

旧戸籍には「両親」という夫婦と、あなたという「子供」が既に存在しています。ですから子供を旧戸籍に入れることはできないのです。

妻の戸籍・姓(子供アリ)(2-3)

妻が取りうる戸籍・姓のパターンについては、既に説明しました。これからは、妻と子供の戸籍・姓について合わせて説明していきます。子供単体での戸籍・姓は、3パターンあります。(下図:赤字太枠点線

妻_戸籍・姓のパターン
  1. 結婚時の戸籍のまま(#3)
  2. 新しい戸籍に入る(姓は婚姻時と同一:田中)(#4)
  3. 新しい戸籍に入る(姓は旧姓:鈴木)(#5)

子供の戸籍・姓の3パターン

基本形態(2-3-A)

離婚届を提出したままの状態であれば、妻は一つ前の戸籍に戻り、子供は婚姻時の戸籍に入ることになります。(下図①、A:赤字太枠点線

離婚 妻 子供 戸籍 姓

もしも子供が夫に育てられるのであれば何ら問題はありませんが、妻が子供と一緒に生活する場合に2つ問題があります。

2つの問題
  1. 妻と子供の姓が異なる
  2. 妻と子供の戸籍が異なる

妻と子供の姓が異なる(2-3-A-1)

一緒に生活する場合に、妻と子供の姓が違っても、当事者である妻と子供が世間からの目を全く気にしないというのであれば日常生活で支障はありません。

しかし入学手続きや保険加入手続きにおいて、親権者欄にあなたの名前を書くと「本当に親権者なのか?」と念入りに確認される可能性は否定できません。

妻と子供の戸籍が異なる(2-3-A-2)

妻と子供の戸籍が異なる場合であっても日常生活を営む上では問題はないと思いますが、保険契約などで『親子関係を証明する必要がある場合』には混乱が生じるでしょう。

妻と子供が一緒の戸籍に入っている場合には妻の戸籍を取り寄せることで親子の確認ができますが、戸籍が異なる場合には妻の戸籍謄本を調べてもそこに子供の情報がないので確認しようがないのです。ですから妻と子どもの親子関係を証明するためには、『子供の戸籍謄本』を取り寄せる必要があります。

妻が新しい戸籍(姓は婚姻時:田中)を作る(2-3-B)

「多感な時期を過ごす子供の姓を妻の旧姓に変更するのは可哀想」という判断をする場合には、妻が婚姻時の姓を名乗ることも可能です。

つまり妻が子供と同じ姓である「田中」を名乗るためには、田中姓の新しい戸籍をつくるのです。(下図①⇒②:赤字太枠点線

妻が新しい戸籍(姓は婚姻時:田中)を作る

田中姓の新しい戸籍をつくることで、妻は子供と同じ「田中」という姓を名乗ることができますし、子供が友達から「なんでお母さんと姓が違うの?」と質問される不安から解放される上に、他人から「本当に親権者ですか?」と念入りに確認される場面も減るでしょう。

しかしこの状態では、姓は一緒ですが「戸籍」が母と子供で別々であることには変わりありません。

子供の戸籍を移動する

子供の戸籍を自分の戸籍に移動させることも可能です。(下図②、B:赤字太枠点線

子供の戸籍を移動する

これで妻と子供の戸籍も姓も一緒に揃えることができました。

しかし婚姻時の姓を名乗りたくないというケースもあると思います。例えば以下のようなケースです。

婚姻時の姓を名乗りたくないケース
  • 夫が法律に違反した場合
  • DV・モラハラ被害にあっており夫の記憶を思い出したくない場合
  • 婚姻時の姓ではアイデンティティーを築けない場合

婚姻時の姓を名乗りたくない場合には、旧姓を名乗ることになりますが、残念ながら旧戸籍に妻と子どもを一緒に入れることはできませんので(同じ戸籍に入れるのは親と子どもだけ。孫を入れることはできない。)、旧姓と同じ姓の新しい戸籍をつくりそこに妻と子どもを入れる必要があります。

妻が新しい戸籍(姓は旧姓:鈴木)を作る(2-3-C)

妻が旧姓の新しい戸籍をつくり、そこに子供を入れることが可能です。(下図③、C:赤字太枠点線

妻が新しい戸籍(姓は旧姓:鈴木)を作る

戸籍・姓に関する手続き(3)

さてこれまでは夫、妻、子供の戸籍・姓の組み合わせについて詳しく説明してきました。これから先は、戸籍・姓に関する手続きについて紹介していきます。

戸籍・姓に関する手続き
  1. 夫に関する手続き
  2. 妻に関する手続き
  3. 子供に関する手続き

夫に関する手続き(3-1)

夫が戸籍の筆頭者である場合には、夫に関する手続きは離婚届のみです。

妻に関する手続き(3-2)

妻に関する手続きについては、少しだけ複雑です。これまで説明に用いてきた図に、必要な書類をまとめていきます。それでは、順を追って解説していきます。

離婚届 離婚の際に称していた氏を称する届け

離婚届の提出(3-2-1)

まずは離婚届を提出するところから全ては始まります。離婚届には「婚姻前の氏にもどる者の本籍」という欄があります。

「婚姻前の氏にもどる者の本籍」は、婚姻時の戸籍に入っていた「筆頭者でないもの」(多くの場合は妻)に関わる項目です。この欄で以下の2択に答えを出すことになります。

2つの選択肢
  1. 旧姓をつかう(①、③のパターン)
  2. 新しい戸籍で婚姻時の姓をつかう(②のパターン)
旧姓をつかう(3-2-1-1)

下図の「●⇒①」、「●⇒③」の場合には、離婚届を提出するのみです。

離婚届けの提出で済む場合

ここで新しい戸籍の姓を婚姻時のものを使用する場合(②の場合)には、追加で必要な手続きがありますのでこれから説明します。

新しい戸籍で婚姻時の姓をつかう(3-2-1-2)

民法では結婚して姓が変わった者が離婚した時は、原則で旧姓に戻ることが規定されていますので、原則を適用させない場合には追加の手続きが必要になります。

その手続きを「離婚の際に称していた氏を称する届け」といいます。通常は離婚届と同時に届けるのが一般的です。

しかし離婚時には自分の姓をどうするか迷っている場合には、離婚の日から3ヶ月以内であれば大丈夫です。もし3ヶ月以内に届出ができなければ、家庭裁判所への申し立てが必要になります。

念のため、図でも示しておきます。

離婚の際に称していた氏を称する届け

子供に関する手続き(3-3)

もしも子供がおり離婚時の戸籍から変更するのであれば、必要な手続きがありますので説明します。必要な手続きは、2STEPに分かれています。

子供の氏と戸籍を変更する手続き

子どもの氏を変更する 子どもを自分と同じ戸籍に入れる

子供の氏・戸籍変更の手続き
  1. 子供の氏を変更する手続き
  2. 子供を自分と同じ戸籍に入れる手続き

子供の氏を変更する手続き(3-3-1)

子供の氏を変更する手続きは、「子供の氏の変更許可申立書」を子供の住所地を管轄する家庭裁判所に提出するところから始まります。申立が許可されれば「許可審判書」が交付されます。

手続きの必須知識
申立人
  •  子が15歳以上⇒本人
  • 子が15歳未満⇒親権者
申し立ての場所 子の住所地の家庭裁判所
必要書類
  1. 申立書
  2. 子の戸籍謄本
  3. 子が入る予定の親の戸籍謄本
  4. 収入印紙(800円/人)
  5. 郵便切手

※収入印紙と郵便切手の金額は裁判所に要確認

子供を自分と同じ戸籍に入れる手続き(3-3-2)

「許可審判書」と「入籍届」を、子供の本籍地または子供・親権者の住所地の市町村役場に提出すればOKです。

手続きの必須知識

「入籍届け手続き」の「申立人」、「場所」、「必要書類」についてまとめておきます。

申立人
  •  子が15歳以上⇒本人
  • 子が15歳未満⇒親権者
申し立ての場所 子の本籍地または子・親権者の住所地の市区町村
必要書類
  1. 入籍届
  2. 家庭裁判所の氏の変更許可の審判書謄本
注意

子供の氏を変更するか迷っている場合には、急ぐ必要はありません。なぜならば子の氏の変更手続きには、時間的な制限がないからです。

子供の意向もあるでしょうし、進学のタイミングや本人が希望する時期などを見計らって変更すると良いでしょう。

離婚時に選択した姓を変更は可能?

これまでは離婚してからの戸籍・姓の変更手続きについて紹介してきましたが、やむを得ない事情がある場合には、離婚時に選択した姓の変更も可能です。

姓の変更が認められる場合とは、以下の3点をクリアした時だといわれています。

  • 姓が社会的に定着される前に申し出た
  • やむを得ない事情があり、思いつきでない
  • 第三者や社会に、弊害が発生することはない

しかし上記に示した基準はあくまでも目安であり、明確な基準があるわけではないようです。

最後に

戸籍と姓については、少し複雑なので説明も長くなってしまいました。お疲れ様でした!後悔しない戸籍と姓の選択ができることを祈っています!