子供の親権と戸籍についてわかりやすく解説します!
親権の基本知識(1)
- 親権の大前提
- 親権とは?
- 親権の決着パターン
親権者の大前提(1-1)
子供の親権を絶対に手に入れたいと考えてる方も、反対にいらないと考えている場合でも、子供の実の親である事実に変わりはありません。
そのため親権の有無とは関係なしに、親としての権利と義務は発生します。具体的には、以下の3つの権利と義務は覚えておきましょう。
- 子供と面会する権利
- 子供に財産を相続させる権利
- 子供を扶養する義務
つまり親権を放棄すれば子供を扶養する義務がなくなるわけではありませんし、親権がないからといって子供と会う権利がなくなるわけではありません。
以上が親権の大前提となる知識です。
親権とは?(1-2)
親権とは、以下の3つの権利や立場を合わせた概念です。
- 身上監護権
- 財産管理権
- 法定代理人
身上監護権(1-2-1)
身上監護権とは子供と一緒に暮らし、身の回りの世話や教育、しつけをする権利です。
子供が成人するまでに、一人前の大人に成長させる役割を担います。
財産管理権(1-2-2)
財産管理権とは、子供名義の財産を管理する権利のことです。
法定代理人(1-2-3)
法定代理人とは子供が何らかの契約をする必要が生じた場合に、その代理人となれる権利をもつ存在です。
法定代理人でないとできない契約の代表的例としては、未成年時のパスポート申請が挙げられます。
親権の決着パターン(1-3)
婚姻時は以上3つの権利を夫婦で共同行使することになっています。離婚後は親権を夫婦で分ける必要があります。よくあるパターンは2つあります。
- 単独親権
- 身上監護権のみ分割
単独親権(1-3-1)
圧倒的大多数の夫婦の場合は、子供と一緒に暮らす側の親が全ての親権をもちます。裁判所にて夫婦が親権を争った場合、単独親権の判決が下るのが一般的です。
身上監護権のみ分割(1-3-2)
親権の中から身上監護権のみを分割して受け渡す場合もあります。例えば母が身上監護権を所有し子どもと暮らす一方で、監護権以外の権利は夫がもつケースがあります。
親権を分担するメリットは、「子供と一緒に暮らしたい」という要望と「後継者が欲しい」という要望を両方叶えられることです。
親権を分担することによるデメリットもあります。身上監護権をもつ母親が同意する契約であっても、法定代理人である父親の了承がなければ、手続きができない状況も考えられます。
離婚後にお互いが再婚したとしても、疎遠になってしまうことがないように注意する必要があります。
親権を分担する際には、「口約束」だけは避けてください。離婚届には親権をどちらにするか記載する欄はありますが、監護者について記載する欄はないからです。
監護権を分けることを口約束していたとしても、その後先方の(親権者の)気が変わり「子供を返せ!」と主張される可能性だってないわけではありません。
親権の決定について(2)
- 親権者決定のタイミング
- 親権者決定の基準
- 親権者の決め方
親権を決めるタイミング(2-1)
親権を決めるタイミングは、離婚届を提出するタイミングと一緒です。離婚届にある親権についての記入欄を埋めないと、離婚届は受理されません。
親権の決定基準(2-2)
親権を決める際に最優先されるのが「子供の利益と福祉」という考え方なのですが、具体的には以下の2つ基準で決定されることが多いようです。
- 年齢
- 現状の住まい
年齢(2-2-1)
子供の年齢と親権者との関係を表にしました。
子供の年齢 | 親権者 |
---|---|
8歳~9歳以下 | ・ 母親が親権者 |
10歳~15歳まで | ・ 基本的には母親が親権者。しかし、本人の意思も加味される |
15歳以上 | ・ 本人の意思 |
ただし上記で紹介した基準は、あくまでも目安に留めてください。
現状の住まい(2-2-2)
子供の現在の住まいは、非常に大きな決定要素になります。「子供を育てる環境を頻繁に変えてしまっては、子供の健全な育成に悪影響を及ぼす」という考えが根底にあるようです。
親権の決め方(2-3)
親権の決まり方には、3つのパターンがあります。
- 協議で決定する
- 調停・審判で決定する
- 裁判で決定する
協議離婚で決定する(2-3-1)
親権を決定する要素を先ほど紹介しましたが、それらの基準はあくまでも家庭裁判所で争った場合に適用されるものです。
夫婦がお互いに話し合って協議の上で決定するのがもっともスムーズな方法です。
調停・審判で決定する(2-3-2)
夫婦の協議で親権が決まらない場合には、調停で話し合うことになります。
なお実際に調停で話し合うときは、親権のみならず、離婚の可否、慰謝料、財産分与、養育費、婚姻費用などについても一緒に話し合われることが多いです。
もしも調停・審判について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

裁判で決定する(2-3-3)
離婚問題を裁判で争う合理的な理由はほとんどありませんが(離婚を裁判で決着させている夫婦は全体の1%程度)、多大な労力をかけてでも争う可能性があるものの一つに「親権争い」があります。
もしも離婚、お金、親権のうち、親権を奪取することが1番優先順位が高いのであれば、早期に弁護士に相談することをオススメします。
親権の応用知識(3)
- 親権者・監護権の変更
- 親権者が死亡した時の対応
- 子供が連れ去られた時の対処法
親権者・監護者の変更(3-1)
離婚時に一度決定した親権や監護権を変更することは可能です。しかしあくまでもその変更が子供にとってメリットがあると判断される場合に限ります。
- 変更申し立てが可能な場合
- 変更申し立てが認められない場合
- 親権変更申し立ての手続き
変更申し立てが可能な場合(3-1-1)
例えば以下のような理由であれば、親権の変更申し立てが可能です。
- 海外への転勤
- 子供への虐待している
- 子供の養育を放棄している
- 怪我や病気による長期間の入院
または子供の利益と福祉に反すると考えられる行動から子供を守る理由であれば、申し立てることは可能です。
変更申し立てが認められない場合(3-1-2)
一方で、以下のような理由による親権変更は認められません。
- 再婚するから
- 子供が邪魔になったから
大人の身勝手な理由により子どもの利益と福祉に反すると考えられる場合には、変更申し立てが認められることはありません。
親権変更申し立ての手続き(3-1-3)
親権変更を申し立てる手続きについて、簡単に紹介しておきます。
申し立て手続きする人
親権者または監護者の変更を申し立てる人は、子供の親族です。子供の親族とは、親権・監護権を持たない方の親、祖父母、おじ、おば などです。
申し立て先
申し立てるのは家庭裁判所になります。基本的には当事者が話し合って調停の合意を目指すことになります。
裁判所の判断で、親権者または監護者を変更させることもあります。その際には変更理由の妥当性や、子供の幸せのためにどちらの親がふさわしいかが重視されます。
親権者が死亡した時の対応(3-2)
親権者が死亡した時には、3つの可能性があります。
- もう片方の親
- 後見人(死亡した親権者が指定)
- 後見人(家庭裁判所が指定)
通常であれば、もう片方の親が子供を引き取ることになります。しかしもう片方の親が、著しく子供の権利実現に不適格と判断される場合には、後見人を探すことになります。
もしも死亡した親が生前に後見人を指定していた場合には、その方が親権を持ちますが、このケースはレアケースでしょう。
一般的には子供の親族の請求によって、家庭裁判所が後見人候補への聞き取りなどを行い、後見人を決定します。
最後に
親権の有無に関わらず、子供を扶養する義務から逃れることはできませんので、子供の幸せのためにも親権に対する確実な知識を収集するようにしましょう。