離婚調停のありがたみは、「自分では伝えきれないことを調停委員の口から配偶者に伝えてくれる」という点にあります。

建前上、調停委員は公正中立ということになっていますが、そんなことはありません。離婚調停に公正中立を求めるのであれば、調停委員を全員クビにしてAIに「夫婦関係の修復可能性」を判定させたほうがいいと思いますが、そうなっていない以上、調停委員を味方につけることが重要になります。
どうすれば調停委員を味方につけることができるでしょうか?
調停委員の共通点
調停委員の素性はさまざまです。元・弁護士、元医師、元公務員、宗教家などさまざまな背景をもった方々が調停委員として活躍しています。
つまりいろいろな考え方をもった方々いるわけですが、共通点もあります。それは「多忙である」という点です。調停委員は複数の案件を同時に抱えており限られた時間の中で対応しているのが実情です。
ですから調停委員の負担をできるだけ減らすことが、調停委員からの印象を良くする鍵になります。
そして「調停委員の負担を減らす」という観点に立てば、「主張できることは全部主張しよう!」という心意気で、調停委員が読み切れないほどたくさんの資料を用意するような行為は、むしろ逆効果になることは理解できるはずです。
重要なことなので繰り返しますが、あなたが多忙であるのと同様に、調停委員も多忙なのです。ですから「めんどくさい主張」をするよりも、「この案件は早く決着をつけられそうだ」という見込みを調停委員にもたせることが重要になるのです。
「めんどくさい主張」とは、事実を確認するのに時間がかかるような主張のことであり、例えば「財産分与の計算」などが当てはまります。
近年「共働き&お財布は別」の夫婦が増えてきており、お財布が別の場合は「夫婦の共有財産はいくらなのか?」ということを確認するのが困難になることがよくあります。
なぜ困難になるのかといえば、お互いがお互いの通帳や証書、インターネットバンキングの口座などを隠すからであり、仮にそれらの情報が明らかになったとしても、「どのお金を何に使ったのか?」まで正確に調べようとすれば、膨大な時間がかかることは明らかです。
もちろん財産分与に関するすべてを明らかにするために、調停委員に調整を依頼することもできます。しかしここで考えなくてはいけないことは、そのこと(財産分与)について話し合うことが成果につながるか?という点です。
調停1コマで使える時間は限られていますし、1回の調停が終われば次の調停は1か月先ということは珍しくありませんので、事実を確認することだけに膨大な時間を使うぐらいなら、そのことで争うのをあなたが諦めるもしくは相手に諦めてもらえる選択肢がないか検討することをおススメします。
つまり調停員に「あなたの財産をすべて明らかにしてください!」と相手に伝えてもらうように調整することもできますし、「お財布が別々である以上、財産分与で争うのはナシにしませんか?」と相手に伝えてもらうこともできるわけですが、どちらの選択肢のほうが「調停委員が本気度になって相手に伝えてくれるか?」、「あなたの求める結果につながるか?」ということを一度立ち止まって冷静になって検討することが重要なのです。